私たちの生活は、今やデジタルの世界と密接に結びついています。
ネット銀行口座や電子マネー、SNSアカウントに至るまで、多くの大切な情報や資産がデジタル上に保存されています。
しかし、これらの「デジタル遺産」は、相続の際に大きな問題を引き起こすことがあります。
ログインIDやパスワードがわからなければ、相続人がその存在にすら気づかず、放置されたままになってしまうことも少なくありません。
放置されたデジタル遺産は、毎月の自動引き落としや投資の損失といった思わぬリスクをもたらし、遺族に負担をかける恐れがあるからです。
またサブスクリプションの契約や、クレジットカードの登録などもパソコン上やスマホ上に残されていて、故人がこのことを誰かに知らせないまま亡くなった時に登録解除ができなければ継続的に引き落としがされてしまいます。
目次
デジタル遺産とは
デジタル遺産とは、故人が生前にデジタル形式で管理していた財産やデータのことを指します。
これには、ネット銀行の口座、電子マネーの残高、仮想通貨、株式やFX取引のアカウントなどの金銭的な価値を持つ資産が含まれます。
また、ポイントサービスや有料会員制サービスなどもデジタル遺産に該当します。
さらに、デジタル遺産には金銭的な価値がないものの、思い出や情報として重要なものも含まれます。
このことをデジタル遺品と呼びます。
スマートフォンやパソコンに保存された写真や動画、クラウド上のデータ、SNSのアカウントや連絡先などが該当します。
デジタル遺産の問題点は、これらの資産がインターネット上で管理されているため、ログイン情報(IDやパスワード)が分からなければ、相続人がアクセスできないことで不具合が生じます。
さらに、相続人がデジタル遺産の存在に気づかない場合は、財産が放置されることになってしまいます。
また、口座引き落としで何かに契約している場合は、解約しない場合はそのまま引き落としが続くことになってしまいます。
デジタル遺産を適切に管理しておくことは、家族の負担を軽減しトラブルを防ぐために非常に重要な問題となるのです。
デジタル遺産の問題点
スマートフォンやパソコンに銀行口座などの重要な情報が保存されている場合、パスワードがかかっていると、相続人がこれらの情報にアクセスできず、財産の詳細を確認するのが難しくなります。
特に、財産が存在していてもアクセスできなければ、相続手続きに大きな支障が出るのです。
また、株式投資やFX取引が行われていた場合、相続人がその存在を知らないと、知らない間にマイナスの資産を相続してしまうリスクもあります。
もしパスワードが分からなければ、銀行口座の引き落としなどで契約の存在に気づいたとしても、解約に必要なパスワードがないため、相続人はこれらの契約を解約できず適切な管理ができなくなります。
デジタル遺産は目に見えないため、相続人がその存在に気づかないケースが多いからです。
分かったとしてもパスワードがかかってたりすることで開くことができません。
このため、デジタル遺産は遺族にとって大きな負担となることがよくあります。
こうした問題を避けるためには、生前にデジタル遺産の整理や管理を行うことが非常に重要です。
相続人が負担を抱えることなく、スムーズに遺産を引き継げるように、早めの対策を講じることが求められます。
具体的な整理方法
デジタル遺産を整理するための具体的な方法について、以下のステップに分けて説明します。
これらの対策を事前に行うことで、残された家族がいろいろな負担やトラブルを避けることができます。
1. デジタル資産のリスト化
まず、どのようなデジタル遺産があるかを把握し、リストを作成します。
- ネット銀行の口座情報
- 電子マネーのアカウント
- SNSやメールアカウント
- 有料会員サービス(動画配信、音楽サービスなどのサブスク契約)
- オンラインで購入したデジタル継続契約(電子書籍、ソフトウェアライセンスなど)
2. ログイン情報の整理
デジタル資産にアクセスするためのログインIDやパスワードを一覧にまとめ、定期的に更新することをします。
- アカウントのログインID(メールアドレスやユーザー名)
- パスワード
- セキュリティ質問や二段階認証に関する情報
- アクセスが必要な機器やアプリの情報
3. パスワード管理ツールの利用
ログイン情報を紙に書いて保存する方法もありますが、セキュリティ面を考慮すると、信頼できるパスワード管理ツールを使用するのが安全です。
ログイン情報を安全に一元管理し、パソコン上の一つに集約してパスワードなどを相続人に引き継ぎやすくなります。
また、パスワードが変更された場合などはすぐに反映できることから、紙に残すより利便性があります。
しかし、その管理ツールの開け方がわからなければならないことから、そのパスワードは教えておくかどこかに残しておかなければなりません。
また、パスワード管理ツールがハッキングされると、すべてのアカウント情報が流出する可能性があるため、強力なパスワードと定期的に書き換えることは必要です。
4. エンディングノートの活用
エンディングノートにデジタル遺産に関する情報を記載しておくと、相続人がスムーズにアクセスすることができます。
エンディングノートには、以下の事項を記載することが推奨されます。
- デジタル遺産の概要(銀行口座、仮想通貨、SNSアカウントなど)
- 契約しているクレジット会社の解約手続き方法など。
- 主要なログインIDとパスワード情報
銀行などが発行しているデジタルエンディングノートのアプリがあるのでそれを利用すると便利です。
5. 遺言書にデジタル遺産を明記
デジタル遺産についての詳細を遺言書に記載する方法も有効です。
これにより、法的な問題を回避し、相続時の混乱を防ぐことができます。
特に仮想通貨や電子マネーなど、価値が変動する資産に関しては明確に相続人を指定することが重要です。
6. 定期的な見直し
デジタル遺産は、時間の経過とともに内容が変わることが多くあります。
新しいサービスを利用し始めたり、古いアカウントを削除したりすることもあることから、少なくとも年に一度はエンディングノートを見直し、更新することが大切です。
7. 相続人との共有
信頼できる相続人や家族とデジタル遺産の情報を共有しておくことも重要です。
必要な場合は、事前にアクセス方法やログイン情報を伝えておくことで、相続手続きが円滑に進むことができます。
また、家族間でのトラブルを未然に防ぐことができます。
8.デジタル遺産を管理する注意点
デジタル遺産を保護管理するためには、適切な対策を講じることが重要ですが、注意すべきポイントもいくつかあります。
これらを理解し、安全にデジタル遺産を管理するための対策を取ることが大切です。
ログインIDやパスワードを整理する際、紙に書き留めたり、パソコンのメモ帳に保存するのはリスクがあります。
パスワード管理ツールを使用する際も、セキュリティに優れた信頼できるツールを選ぶことが大切です。
まとめ
現代社会では、私たちの生活の多くがデジタル化され、財産や重要な情報がインターネット上で管理されています。
ネット銀行の口座や仮想通貨、SNSアカウント、クラウドに保存された写真や文書など、これらはすべて「デジタル遺産」として残されるものです。
もしこれらのデジタル遺産を整理しないまま亡くなった場合、遺族がその存在を知らない、またはアクセスできないといった問題が発生します。
最悪の場合、貴重な資産が無駄になったり、遺族に経済的負担がかかる可能性もあります。
特に、金銭的な価値を持つネット銀行や電子マネーの口座が放置されると、引き落としが継続して行われたり、投資アカウントの損失が発生する可能性があります。
さらに、SNSやメールアカウントがそのまま残されると、故人のプライバシーや個人情報が悪用されるリスクも考えられます。
こうしたリスクを避けるために、元気なうちにデジタル遺産の整理が非常に必要です。
デジタル遺産の整理は残された家族の負担軽減につながる
故人の意向や資産の存在が明確にされていれば、遺族は何をすべきか迷わずに済み、相続や手続きもスムーズに進行します。
反対に、整理がされていないと、遺族は故人がどのような資産を持っていたのか探し出さなければならず、時間や精神的な負担が増してしまいます。
また、解約するものなどの一覧を記載していれば、スムーズに手続きすることができます。
亡くならなくても病気で入院した時や認知症など進行する可能性がある場合があることから、早めのデジタル遺産を整理することが必要になってきます。
家族が不安やストレスを抱えることなく必要な手続きに集中できる環境を整えることが、残された人がデジタル遺産に対して不必要な混乱や争いを避けるためにやるべきことなのです。