コレクティブハウス聖蹟
団塊の世代が後期高齢者になって、日本の高齢化率は世界で一番です。
それによって、高齢者が住む老人ホームなどの需要が増えてきたのですが、健康で元気な老人も数多くいることから高齢者の一人暮らしも増えてきています。
しかし、今の日本の住宅事情からすると、都会の場合は、高齢者が一人暮らしをするにしては安全で手頃な住宅というものが不足しています。
一戸建ての広い家でも、高齢者にとっては手入れやメンテナンスに時間やお金がかかります。
団地住いにおいては、エレベーターのない所だったりと、若い時と違って高齢になると不便なことが多くあります。
地方においては買い物に行くにしても病院に行くにしても車がないと生活できないということがあります。
これらの問題は、高齢者が自立した生活を送りながらも、必要な支援を受けられるためには、なかなか細かなことまで手が回らないというのが現状です。
そこで、今回は、高齢者が安心して住むための住宅事情について考えてみることにします。
目次
日本が抱える高齢者の住宅事情
日本は、世界でも有数な高齢化社会を迎えています。
これは、長寿化が進み、出生率が低下しているためで、社会の様々な面で大きな変化をもたらしています。
特に住宅問題においては、高齢者にとっての大きな課題となっています。
高齢者の人口が増加する中で、高齢者が直面する主な問題は、住宅の安全性や使い勝手の悪さにあります。
多くの高齢者は、階段がある家や、公共交通機関から遠い場所に住んでいたりすれば、これが日常生活における困難を引き起こすことになります。
さらに、一人住まいの高齢者の増加により、孤独感や社会的孤立が深刻化してきます。
これらの問題に対処するため、安全でアクセスしやすく、かつ経済的にも負担が少ない住宅の提供が急務とされているのです。
そこで、今回はヨーロッパなどの高齢者住宅として便利なコレクティブハウスについて考えてみることにしました。
コレクティブハウスとは、
コレクティブハウスという聞きなれない言葉だと思いますが、ヨーロッパなどでは一般的な、元気な高齢者が住む共同住宅のようなものです。
コレクティブハウスの概念は、20世紀初頭のヨーロッパ、特に北欧諸国から発祥します。
当時の社会背景において、家族構造の変化、生活コストの上昇などから、共同生活の新たな形態を求めることが動機となっています。
この生活形態は、個人の自立とコミュニティ生活のバランスを重視し、相互支援、環境への配慮、社会的交流を促進することを目指しています。
シェアハウスと同じと思われるかもしれないのですが、シェアハウスは一緒に住むという側面が強調されるのに対し、コレクティブハウスは、一緒に生きることを目指する点で異なると言えるのです。
コレクティブハウスは、複数の人々が一つの建物内で共同生活を営み、共同でみんなで支え合いながら住んでいます。
コレクティブハウスの目的は、住居費の削減、社会的な孤立の防止、持続可能な生活様式の促進などといったさまざまな理由があります。
個人または家族がプライベートな空間を持ちながら、キッチン、リビングルーム、洗濯室などの共用で使います。
この生活方式は、個人のプライバシーは尊重しながら、住民同士が支え合い助け合いながら社会的なつながりを深めることを目的としています。
コレクティブハウスが注目される事情
日本でもコレクティブハウスが注目されるようになった理由は、高齢者の孤立問題への有効な対策と見られているからです。
高齢者が他の世代や異なる背景を持つ人々と共同生活を送ることで、社会的孤立を防ぎ、相互に支援し合うコミュニティを形成できる可能性があるのです。
また、共用スペースを利用することで、生活費を抑えることが可能になり、経済的な負担を軽減することもできます。
さらに、共同での活動やイベントは、高齢者を孤立化させないということや、高齢者が活動的な生活を維持することで心身の健康を支えることができるのです。
これらの理由から、日本においても高齢者向けのコレクティブハウスが、新たな住宅および生活の選択肢として、今後さらに発展していくことが期待されています。
日本のコレクティブハウスの取り組み
コレクティブハウスでの生活
コレクティブハウスでの生活は、共同体の一員としての協力と相互支援に基づいています。
共有スペースの利用
- キッチン: 多くのコレクティブハウスでは、キッチンが共用スペースの中心です。住民はここで食事を共に作り、食べることが多く、これがコミュニティ形成の重要な場となります。
- リビングルーム: みんなで過ごす憩いの場であり中心の場であります。住民が集まって会話を楽しんだり、映画を見たり、イベントを開催したりします。
- 洗濯室、庭、その他の共用スペース: 日常生活に必要な設備やスペースを共有することで、資源を有効に利用し、経済的な負担を軽減します。
社会的交流とサポート
- 共同の食事: 一週間に数回、共同での食事の時間を設けることが一般的です。これは、住民同士の交流を深め、コミュニティ感を強化する機会となります。
- イベント、パーティー: クリスマス会や誕生日会やワークショップなど、住民が共に楽しむ様々な活動が企画されます。これにより、趣味や興味を共有し、新しいスキルを学ぶ機会が生まれます。
相互支援と協力
- 家事の分担: 清掃、料理、メンテナンスなど、共用スペースとコミュニティの維持に必要な家事は、住民間で分担されます。
- 意思決定のプロセス: 住居に関する重要な決定（新しい住民の受け入れ、大規模な購入や改修など）は、合意形成プロセスを通じて行われます。このプロセスは、全員が意見を出し合い、共通の解決策を見つけることを目的としています。
個人のプライバシーとコミュニティ生活のバランス
- プライベートスペース: 住民には個人のプライバシーが保障されるプライベートスペースとしての個室が提供されます。これにより、共同生活の利点を享受しつつも、個人の時間と空間を確保することができます。
コレクティブハウスでの生活は、共通の価値観を持つ人々が協力し、支え合いながら、より充実した生活を目指す選択肢です。
この生活形態は、経済的なメリットだけでなく、社会的な孤立を防ぎ、共助の精神を育み強いコミュニティ意識を持ってお互いが協力して生活することなのです。
高齢者にとってのコレクティブハウス
コレクティブハウスは、みんなが協力し合いながら助け合って生活することで、高齢者においては自立した生活を送ることができます。
住む人同士が家族みたいな間柄になって、必要に応じて支援を受けることができるのです。
そのことにより、高齢者が社会とのつながりを維持し、支援と自立のバランスを保ちながら快適に生活するための有効な選択肢を提供してくれます。
高齢者だけが生活する老人ホームと違って、コレクティブハウスは、子供から若い人までいろいろな人達が集まって生活しています。
若い人は力仕事や、中年夫婦は子育ての支援、高齢者は今までの経験を生かした仕事など、それぞれが役割分担があって共に生活する場です。
共同生活であるために経済的な負担の軽減というメリットがあり、社会的なサポートネットワークの確立や、自立と尊厳が認められたコミュニティーは幸福感の向上とともに、生活する上においてこれからの高齢者の生活をする場としての大きな魅力の一つになるでしょう。
