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「イノシシと森の泉」

この物語は、森の泉をめぐるお話です。

周りのことを考えないで、自分だけ楽しんだイノシシの行いは、許されるものではありませんでした。

でも、心を入れ替えてみんなのために行った行為は、周りの人に影響を与えることになります。

けっして派手なことでなくても、毎日を一途にコツコツと行うことが尊いというお話です。

森の奥には、動物たちが通うきらきら光る泉がありました。

この泉の水は川となり、森をうるおしているのです。

動物たちは毎日のようにここに集まり、水を飲むのです。


この泉は、森の動物たちにとって、命の根源であり憩いの場でした。


ある日、みんながいないときにイノシシが泉にやってきました。

「ちょうどいい場所に水浴び場がある」

イノシシは泉にどっかと入り、足でバシャバシャかき回しながら、ごくごくと水を飲みはじめました。


ついでに体も洗っちゃえと、体をごしごしこすりはじめたのです。

「ふう、気持ちいいな! お風呂みたいだ!」

イノシシは楽しそうに大声で笑いました。


イノシシが暴れるほど、泉の水はどんどんにごりはじめ、魚たちもにげていってしまったのです。


翌日、動物たちが泉に来た時、水はにごって飲むことができません。

「誰がこんなことをしたんだ!」

動物たちは口々に犯人を非難しました。


「ぼく、見たんだ! イノシシが水をよごしているのを!」

小鳥が怒ったように言いました。

「ぼくは、ただ遊んだだけなんだ」

イノシシは、自分が何をしでかしたのか分かっていないようでした。


「これでは、みんなが水が飲めないじゃないか」

動物たちの剣幕に、イノシシはしょんぼりして言いました。

「水遊びが気持ち良かったものだから、その時は、自分のことしか考えていなかった」

イノシシは動物たちに向かって、素直に謝りました。


モフ子はそっとイノシシに言いました。

「やってしまったことは仕方ないわ。これから気を付けて、一緒に泉をきれいにしましょ」


イノシシは、それから毎日のように、落ち葉を拾い集め、泉を綺麗にするために掃除をしました。

動物たちは笑いました。

「自分がやったことだから、掃除して当然さ」

動物たちは、あざ笑うかのように、イノシシが落ち葉を拾うのを遠くから見ています。

イノシシは、次の日も次の日も落ち葉をひろい続けました。


やがて泉は少しずつ透明さをとりもどしました。

それでもイノシシは掃除をすることをやめませんでした。


そんなある夜、大きな嵐が森をゆさぶりました。

木々は折れ、川はせき止められ、泉はまた落ち葉でいっぱいになりました。


嵐がおさまった次の日、イノシシは夢中で落ち葉を拾いはじめました。

それは、いつもやっていたことだったからです。

動物たちは、イノシシが、真剣に掃除しているのを見て一緒に掃除をはじめることにしました。


やがてみんなが掃除をしたことによって、泉も川ももとの綺麗な透き通った姿に戻りました。

モフ子はやさしく言いました。

「イノシシさんのおかげで泉が綺麗になったわ」

動物たちも、一斉に歓声を上げました。


夜になり、泉の水面には星がきらきらと輝いていました。

イノシシはにっこり笑って言いました。

「泉を守るために、ぼくはこれからも掃除を続けていくよ」

その声は、静かな森にやさしくひびきました。

モフ子はほほえみ、泉には星とふたりの笑顔が映っていたのです。


あとがき

イノシシは泉をよごしたことを反省して、毎日そうじを続けました。
落ち葉を拾い、土をならし、そのことをくり返すたびに水は澄んでいきました。

やがて嵐が来て泉がまたにごっても、イノシシは黙々とそうじをやめませんでした。
その姿に仲間たちも心を動かされ、一緒に泉を守ろうとしたのです。

毎日の仕事は単調かもしれなくても、続けることで泉は生きかえり、森に笑顔が広がったのです。
くり返すことの力が、みんなを喜ばせ、自分の心も明るくしてくれたのです。

派手でなくても、器用でなくても、毎日一所懸命続けることが尊いというお話です。