高齢化が進む中で、多くの高齢者が、もし将来に自分が認知症になったらどうしようと不安に感じています。
そのために脳トレを行い、脳に刺激を与えることで脳を活性化させ認知症予防を図る人が増えています。
ただし、脳トレがどの程度、認知症予防に効果があるかについては意見が分かれるところです。
年齢とともに脳の細胞機能が低下していくため、脳トレで脳を刺激し、神経細胞を活性化させることは一定の効果があると考えられています。
一部の医師は、脳トレだけで認知症が防げるとは言い切れないとし、効果を限定的に見ています。
しかし、字を書かなくなると漢字を書くことを忘れるのと同じように、脳トレを続けることで記憶力や計算力を保つ学習効果が期待でき、脳の衰えを遅らせる効果はあると認めることはできます。
認知症と通常の物忘れは異なるため、脳トレが直接的に認知症を防ぐかは明確ではありませんが、脳の老化に対しては一定の効果があると考えられています。
この記事では、脳トレの効果についてさまざまな視点から検討し、脳トレ以外の認知症予防に役立つ方法を考えてみます。
より良い老後を過ごすためのヒントとして活用してみることにしてください。
目次
脳トレと認知機能
脳トレは、脳を刺激して認知機能を維持することを目的とした活動です。
具体的には、計算問題を解いたり、記憶ゲームやパズルに取り組むことで、脳の神経回路を活性化させることが期待されています。
脳トレは学習アプリやワークブックを使って、デジタルでもアナログでも行うことができます。
その効果は人によって異なりますが、一時的に脳を活性化させるのに役立つとされています。
しかし、脳トレが常に脳の活性化に効果があるわけではないと考える人もいます。
例えば、数独を続けて解いていれば解き方は上達しますが、毎回同じように解いていると脳への刺激が減ってしまいます。
つまり、数独のテクニックを覚えても、それを同じように繰り返すだけでは新たな脳の刺激にならないということです。
このような理由から、脳トレに対して本当に効果があるのかといった懐疑的な見方をする人もいます。
最近の研究が示す脳トレの実態
最近の研究では、脳トレが一部の認知機能に良い影響を与えることがわかっていますが、必ずしも認知症予防に直結するわけではありません。
たとえば、短期間の記憶力や注意力の向上は見られますが、長い目で見たときに認知症のリスクを減らせるかどうかはまだ議論があります。
つまり認知症は病気であって、老化における認知機能の低下とは異なるからです。
認知症は脳の神経細胞がダメージを受けたり、死滅したりすることで起こる病気だからです。
研究においては、脳トレを続けた人の認知機能が少し良くなる傾向が見られるのですが、認知症においては生活習慣や遺伝など、いろんな要素が関わる病気のため、確実な効果を証明するにはさらに研究が必要ということです。
また、脳トレが脳に対する効果があるかどうかにしても、その人の年齢や生活環境、健康状態なども関わってくるといった報告がなされています。
脳の一部が正常に機能しなくなることで、記憶や判断力、言葉や理解力などの認知機能が低下し、日常生活に支障をきたす病気については脳トレをしたところで効果がないのではないかと思われているのです。
つまり、認知症は老化現象における認知機能の低下とは関係ないからです。
脳トレにおいて脳を使い続けることで脳細胞が新たに作られるということは立証されている報告もあることから、脳トレがまったく効果がないかというとそうでもないので、今後の研究が待たれるところです。
脳トレを信じる人と疑う人
脳トレを信じる人たちは、脳が柔軟に変化できることを信じ、毎日のトレーニングで脳の機能を保てると信じています。
脳トレを続けることで、脳の柔軟性が向上し脳が活性化され認知症の進行を遅らせることができると期待しています。
一方で、脳トレの効果に疑問を持つ人は、脳トレの効果が限られていることや、日常生活での刺激の方が大切だと考えているからです。
つまり、家事のことや趣味、社会的な交流の方が脳全体を使う機会が多く、脳トレをするよりも生活を一生懸命することの方が、脳により良意影響を与えると考えるからです。
また、脳トレゲームの効果は一時的で、長期的な認知機能の改善にはつながりにくいという指摘もあります。
そのため、脳トレゲームで脳の効果を最大限に引き出すためには、ただ漠然とゲームを行うのではなく、脳に活力を与えるために運動とか健康的な食事とかといった総合的なことを行って、楽しみながら脳トレを行うことで効果も高まるとされているのです。
したがって、脳トレは楽しく行い、それだけで脳の活性化が図られると考えるのではないことを知ることが大切であるということです。
高齢者に必要な認知機能の維持
認知機能の維持には、日々の活動で脳を刺激し続けることが推奨されています。
特に、複数の認知機能を同時に使う活動が効果的で、たとえば、料理をしながらレシピを覚える、音楽を聞きながら歌詞を覚えるなど、複数のことを同時に行うと脳に多くの刺激が与えられます。
また、新しいことに挑戦することも大切で、脳は新しい経験を通じて多くの神経接続を作り出します。
さらに、認知機能の維持には、規則正しい生活が必要で、食事、睡眠、運動などの基本的な生活習慣を整えることで、脳の健康が保たれます。
例えば、毎朝同じ時間に起きて、毎晩同じ時間に寝るといったリズムを作理、日中は健康的に動いたり人とコミュニケーションウィ取ったりすることで、脳の健康を保つ上で重要な行動です。
手芸やガーデニング、ピアノを弾くことなど、手先を使う活動は脳に良い影響を与え認知機能を維持するのに効果的といわれているので、何かを行うということが脳トレということになります。
高齢者の脳の活性化に良い影響を与える、「シニアのピアノ入門」についた記事がありますので合わせて読んでみてください。
介護施設での脳トレ活動
介護施設では、入居者向けに脳トレプログラムが取り入れられています。
これにより、認知機能の維持や精神的な安定が期待されていますが、効果は個人によって異なるということです。
また、脳トレは他の入居者との交流を増やすためのツールとしても役立っており、社会的なつながりを持つことが認知機能の維持につながるとして、レクレーションの一つとして脳トレを行っています。
絵を描いたり音楽を聴いたり手先を使う活動が行われていて、こうした活動は楽しみながら脳に刺激を与えることができるからです。
介護施設で行われる脳トレには、ゲームやパズル、簡単な計算問題などがあります。
グループで行うカードゲームやクイズ大会は、協力や競争があり脳にとって刺激的なゲームとなっています。
歌を歌ったり、リズムに合わせて体を動かしたりする音楽療法も効果があります。
さらに、絵画や手工芸などや折り紙、書道なども効果的です。
これらの活動は、脳の創造的な部分を刺激し、手先を使うことで脳全体に良い影響を与えるとされています。
脳トレは認知症予防に効果がないのか
数独やパズルは、確かに脳の特定の部分を鍛えることができますが、脳全体をバランスよく活性化させるためには、数独だけをやっていればいいということではありません。
脳トレは運動など動くことも含め複合的に行うことで、脳の活性化に働きかけることから、認知症という病気の予防には効果がなくても、認知機能の活性化には効果がありますし、老人介護施設で行っているレクレーションとしての脳トレは、高齢者が生き生きと楽しんでいることを見ると全く効果がないとは言い切れないのです。
一日中同じ場所にいて何もしないで長時間テレビを見ていたり、単調な毎日を過ごして刺激が少ない生活においては、脳にとって良くないことから、脳に刺激を与える意味でも脳トレは必要なことと言えます。
ただ、本当に認知症に脳トレが効果がないということが言えるかどうかは、今後の研究が待たれるところです。
脳の健康を保つために
脳の健康を保つためには、過度なストレスや不健康な生活習慣を避けることが必要です。
喫煙やアルコールの飲みすぎも脳に悪い影響を与えます。
特に過度のアルコール摂取は、脳の神経細胞を傷つけ認知機能が低下することがあります。
また、孤独感を感じることも脳に悪影響を与えます。
孤独はストレスや不安を引き起こし、脳の健康を損なう原因ともなります。
脳トレだけが脳の活性化に効果があるということではないにしても、社会との関わりを持つことで動いたり、家族や友人と定期的に会話をしたりすることも脳の活性化につながります。
脳の健康を保つためには趣味のグループに参加することを含め、他人とコミュニケーションをとることも大事なことなのです。
記憶力を高めるための方法と習慣
記憶力を良くするには、日常生活を充実して生きることが大切です。
新しいスキルを学んだり、語学の勉強をしたり、音楽を練習したりすることで脳が活性化されます。
特に語学学習は脳のいろんな部分を活性化するためにとても効果的です。
記憶ゲームやクイズなども記憶力を高めるために役立ちますし、旅行や街歩きなどもいろいろなことで覚えることをするために脳に刺激を与えます。
楽しみながら何かに取り組むことで、脳が刺激され記憶力を鍛えることができます。
また、日常的に使うもので、例えば買い物リストや調べ物をしたりする学習を習慣化させることで、記憶力を維持することができるのは、これなども記憶力の脳トレと言えるのです。
脳トレと運動
日常生活の中で手軽にできる運動として、散歩やストレッチ体操などがあります。
運動は脳への血流を増やし、神経細胞の成長を促すことで認知機能の低下を防ぎます。
有酸素運動などは認知症予防に効果があるとされ、運動を習慣にすることで脳の神経回路が強くなり、記憶力や集中力も高まります。
さらに、運動はストレスを減らすのにも効果的で、脳トレを行いながら散歩などお運動をするのは脳の活性化にはとても良いことなのです。
運動は睡眠の質を向上させる効果もあり、睡眠と脳の活性化には、とても重要な要素となります。
このことから脳トレも大事なのですが、脳の活性化のためには複合的な生活を行い、運動も兼ね備えて心と体を鍛えることをするということになります。
脳の活性化で明るく元気に
脳の活性化のためには、脳トレをするということは大事なことで、脳トレはゲームだけではなく充実した日常を生きることも、脳の機能を十分に保つことができます。
このことから、老後に何もすることがなくテレビばかり観ているのではなく、趣味や新たな挑戦をするということが、脳の活性化のためには大切なことです。
ただ、何をしていいかわからない高齢者のためには、脳トレゲームなどで脳に刺激を与えるということが必要で、ただ同じことだけを行っているのではなく、記憶力のゲームや計算力のゲーム、手先を動かすようなジグソーパズルやピアノを弾くことなど、それらを複合的に行うことで脳に刺激を与えることになります。
そして、老後に何もすることがないというのではなく、新たな挑戦として自分が好きな趣味を見つけたりして、人生を楽しむことが認知機能と脳の活性化の方法ということになります。
充実した老後を生きて、認知機能の衰えを感じない日常を送るようにしてください。
