老後の時間は、穏やかであると同時に、ふとした瞬間に孤独や将来への不安が雲のように湧いてくることがあります。
そんなとき、無理に不安を消そうと焦るのではなく、静かに机に向かってみる。
今回は、心の静寂と落ち着きのための趣味として、「写経」を紹介します。
書道が「自分を表現する」ものだとすれば、写経は「自分を空っぽにする」時間です。
ただ文字をなぞる単純な作業がもたらす、深い安らぎの世界があるのです。

目次
三部作の中での写経
この記事は、「余白の時間に心を整える」シリーズの一つです。
なぜ今、写経なのか
年齢を重ねると、体のこと、家族のこと、これからのことなど、考え出せばキリがない不安が、日々の生活に潜んでいます。
これらは、追い払おうとすればするほど、次から次へと湧いてくるのです。
そんな「心のざわつき」を静めるために、古くから行われてきたのが写経です。
お寺で修行として行うイメージがあるかもしれませんが、自宅で、自分のペースで行う写経は、現代における静かな瞑想と言えます。
「なぞる」だけで心は整う
写経の一番の魅力は、「手本をなぞる」という行為そのものです。
自分で文章を考えたり、うまく書こうと構図を練ったりする必要はありません。
ただ、目の前のお経の一文字一文字を丁寧になぞる。
無心になるということは案外難しいものですが、手先を動かし、文字を追うことに集中していると、不思議と余計な雑念が入る余地がなくなります。
書き終えた頃には、さっきまで頭を占めていたモヤモヤが、少し遠のいていることに気づくはずです。
脳への心地よい刺激と達成感
筆を持ち、指先を使って細かな文字を書くことは、脳にとっても良い刺激になります。
また、写経には終わりが明確にあります。
最後の一文字を書き上げ、筆を置いた瞬間にやり遂げたという達成感を味わうことができます。
この小さな成功体験の積み重ねが、日々にハリを与え、自己肯定感を高めてくれるのです
写経の始め方(道具と手順)
写経を始めるのに、大掛かりな準備は必要ありません。まずは手軽なものから揃えてみましょう。
1. 必要な道具
- 筆ペン(または小筆): 初心者は筆ペンで十分です。
- 「写経用」として売られている、穂先が少し硬めのものが書きやすくておすすめです。
- 写経用紙: 薄くお手本が印刷されている「なぞり書き用」の用紙が便利です。文具店や100円ショップでも手に入ります。
2. 環境を整える
テレビを消し、静かな場所を選びます。
お気に入りの椅子に座り、姿勢を正します。
3. 心を落ち着かせて呼吸を整える
書き始める前に、軽く目を閉じて深呼吸をしましょう。
これから「静寂の時間」に入る合図です。
4. 一字一句を丁寧になぞる
うまい下手は関係ありません。
一文字ずつ、心を込めてなぞっていきます。
途中で疲れたら休んでも構わないので自分のペースで進めます。
5. 振り返り
書き終えたら、その文字を静かに眺めてみます。
集中していた時間の心地よさを味わうことができます。
無心になろうとしなくていい
無心になれないと、そう感じる人がいます。
でも、無心を目指さなくて大丈夫です。
手を動かし、文字を追っているうちに、自然と雑念が入りにくくなります。
気づいたときには、心が落ち着き静かになっています。
不安を安らぎに変える習慣
写経は、不安をなくすものではありません。
ただ、不安と距離を取る時間を与えてくれます。
過去でもなく、未来でもなく、今、ここに意識を戻すことができます。
不安を安らぎに変える習慣
もし、心が少し疲れたなと感じたら。
写経の道具を広げてみてください。
きっと、心はゆっくり落ち着いてきます。
それが、シニアの余白の時間の使い方の一つです。
忙しさから離れ、ただひたすらに文字と向き合う時間は、老後の生活に深い意味と価値をもたらしてくれます。
「余白の時間に心を整える」三部作については、こちらをご覧ください。

