
モフ子は、どんなときでも笑顔をわすれない、みんなの人気ものです。
今日は朝から雨が降っていて、傘をさしながら学校に急ぎます。
「雨の日は、きっとカエルさんやカメさんはよろこんでいるだろうな」
モフ子はとても元気で、誰かを思いやるやさしい子です。

学校に着くと、先生から知らせがありました。
「今日は雨だから、遠足は中止です」
リスやキツネたちは「せっかく楽しみにしていたのに……」とがっかりしています。
モフ子はにっこり笑うと、「でも、おべんとうはみんなといっしょに食べられるから楽しいよ!」

いつもは給食なのに、今日はみんなの家の手作りのお弁当を持ってきています。
雨の音を聞きながら、みんなでワイワイ騒ぎながらお弁当やお菓子を広げました。
「みんなと一緒に食べると美味しいね」
モフ子の言葉に、リスやキツネもみんな笑顔になりました。

モフ子は、どんなこともいいほうに考える、明るい心の女の子です。
だから今日も、朝から元気いっぱいに飛び回っています。
ときどき転んで足をすりむくこともあるけどね。

仲間たちがあわててモフ子にかけよります。
みんなが心配するのに、それでも、「だいじょうぶ!」と笑顔を見せると、すぐに元気になってしまいます。

モフ子はなんでも前向きに考えて、笑顔を忘れません。
痛みや悲しみも、笑顔にかえる力をもっているのです。
笑顔になると、つらいことも小さく見えて、心はまた元気になるからです。

ある日、同じクラスの小鳥がモフ子たちに言いました。
「僕、もうすぐ、外国へ行かなくちゃならないんだ」
リスもキツネも目を丸くしておどろきます。
みんな胸がぎゅっとして、言葉になりません。

小鳥は、家族で外国に渡らなければならない事情がありました。
「せっかく友だちになれたのに……」
みんなは寂しがりましたが、仕方ないことはわかっています。
その日から、みんなの時間は特別なものになり、小鳥の歌に耳をかたむけたり、いっしょに走り回ったりして、この一日をわすれないために仲良く遊び回りました。

とうとう小鳥の旅立ちの日がやってきました。
森の仲間たちはみんな集まり、小鳥を見送ります。
涙をこらえてうつむくリス。
目をぬぐうキツネ。
モフ子も胸がいっぱいで、涙が出そうでした。

モフ子はぐっと涙をこらえて、そしていつものように、にっこりと笑います。
「お別れはたしかにさみしいけど、またいつか会える日がきっとあるよ。だから笑顔で送りだそう!」
仲間たちの目に光が戻り、少しずつ笑顔がひろがっていきました。

小鳥は羽を大きくひろげ、森をひとまわりして高く高く舞いあがり、青空のむこうへ飛んでいきました。
モフ子たちも笑顔で大きく手をふります。
「さようなら、またいつか会おうね」

モフ子は空を見あげ、胸に手をあててつぶやきます。
「今日という出会いは、もう二度とない。だからこそ、この時を大事にしよう」

モフ子は気づきました。
毎日はいい日であって、すべては出会いの一度きりだということに。
楽しい日も、くやしい日も、悲しい日も、そのぜんぶが、大切なたからものだからです。
そう胸にきざんで、モフ子はいつものように、元気いっぱいに森をかけ回っていきました。