
朝の光が森をやさしく包んでいました。
モフ子は、朝の光を全身に受けて、胸いっぱいに息を吸いこみます。
「今日もこうして元気に生きていられる」
あたりまえのようで、ほんとうはすごいことなんだと感じながら、小さく手を合わせて、そっとつぶやきました。
「ありがとう」

モフ子は森の中で、草の上にきらきら光る小さなしずくを見つけます。
夜のあいだにうまれた朝露です。
モフ子は顔を近づけ、宝石のような輝きを見つめました。
「ちいさな露が、草や花を育てているんだね。 こんなにちいさなものでも、すべてに関わっているんだ」

モフ子が住む森の中を、風が吹き抜けます。
モフ子は目をとじ、耳をすましました。
見えないのに、たしかにそこに風を感じることができます。
風はモフ子の耳をくすぐり、姿は見えないけれど、わたしたちを涼しくしてくれています。
風があるから、森も生きているのです。

雨の日、モフ子は葉っぱの傘をさして、雨よけに使っています。
雨は大地をうるおし、川から海へ、そしてまた雲になって雨が降ります。
取り巻く自然は、生きていく上で大切な命の循環なんです。

秋には森の中にあるたくさんの果実が実ります。
木の下に落ちていた赤い実を見つけ、 仲間のリスや小鳥が集まってきました。
みんなで分け合う実があるから、わたしたちは元気に生きていくことができます。
モフ子は、森の恵みに感謝しほほえみました。

花のあいだから、やさしい香りがただよってきます。
モフ子は立ち止まり、しずかに目をとじました。
花は、ただ咲いているだけなのに、心をやわらげる香りを運んでくれます。
だれのためでもなく、ただ咲いているだけなのに、そこにいる動物たちを癒してくれるのです。
「お花さん、いつもありがとう」

ある日、森の仲間たちと遊びました。
笑い声が木々のあいだを駆けぬけます。
「一緒に楽しく笑えるって、なんてしあわせなんでしょう」

家に帰ると待っていたのは、お母さんが作ってくれた温かなスープとおかずです。
おかあさんが作ってくれるから、わたしは生きていられるのです。
当たり前に用意された食事も、誰かのおかげで食べることができています。
食べるたびに、ありがたさがしみてきます。

「わたしたちは、どれだけたくさんのものに 支えられて生きてきたのだろうか」
風も、水も、光も、友も。
そのすべてが、感謝という輪でつながっています。

モフ子は胸に手をあてて、そっと目を閉じました。
森はモフ子にさまざまなきっかけを与え、生かされていることに気づきます。
モフ子は森に、「ありがとう」という感謝の言葉を述べます。
その言葉は光となって森ぜんたいに広がっていきました。
すべては、感謝によってつながっているということをモフ子は実感したのです。