
森の奥の日当たりがいいところで、ヤギのお爺さんが、ブルーベリーの木を大事そうに育てていました。
木の周りの草を抜き、水をやり肥料もあげて、一生懸命に大事に育てていたのです。

ある日、森の仲間たちがモフ子をこっそり呼びました。
「ねえモフ子、一緒においでよ」
「やぎのお爺さんが大切に育てている木の実を、ちょっとだけもらいに行かないか」
仲間たちは、これから始まる冒険にわくわくした顔をしていました。

モフ子も一瞬、一緒に行きかけました。
でも、ふと足が止まり胸に手を当てて考えました。
なぜなら、胸の奥で小さな声がしたからです。

「だってあれは、ヤギのお爺さんが大切に育てているものだよ」
モフ子が注意すると、「ちょっとだけ貰うんだからわかりゃしないさ」
と、キツネが言います。
「それに、バレないから大丈夫だよ。みんなでやれば怖くないし」
キツネは、自慢げに言いました。

モフ子は静かに、でもしっかりと首を振って言ったのです。
「ごめんね。私は行かないわ」
仲間たちは少しつまらなそうな顔をして、そのまま行ってしまいました。

モフ子はその場に一人残されたのですが、 モフ子の胸の奥の声を信じることにしました。
「だれかの 大切なものを、勝手にとっちゃいけないわ」
モフ子の胸の奥は、不思議なほどすっきりと、静かで穏やかでした。

しばらくして、森の中からヤギのお爺さんの悲しそうな声が聞こえてきました。
大事に育てていたブルーベリーの実が食べられていたからです。

「最初にできたブルーベリーの実を籠にいっぱい入れて、入院しているばあさんのところに、見舞いに行きたかったのに」
お爺さんはは、寂しそうにブルーベリーの木を見てぽつりと言いました。
その顔は、とても悲しそうでした。

ヤギのお爺さんが大事に育てていたという理由を聞いた動物たちは、モフ子に相談しました。
お爺さんが大事にして育てていた木の実を食べてしまったばかりでなく、おじいさんの優しさまで奪ってしまったことに胸が締めつけられたからです。
モフ子は、動物たちに言いました。
「悪いことをしたら、謝りに行くことよ。私も一緒に行くから、みんなで謝りましょう」

動物たちは、ヤギのお爺さんのところに行き、素直に自分たちが食べたことを謝りました。
ヤギのお爺さんは、優しくニコニコと笑って怒りませんでした。
こうやって、正直にみんなで謝りに来てくれたことが嬉しかったからです。

ヤギのお爺さんを囲んで、動物たちはブルーベリーの実を美味しそうに美味しそうに食べています。
動物たちは、自分たちが悪いことをしたということを反省して、しっかりとお爺さんに謝ったことで、何だか気分もスッキリしたのです。
ヤギのお爺さんは、みんなに言いました。
「木の実が食べたければいつでもおいで、みんなにこうやって分けてあげるから」
お爺さんの言葉に、みんなは歓声を上げました。
あとがき
誰かが大切にしているものを、こっそり盗ってしまうことはいけないことです。
自分さえよければいいという気持ちや、わからなければいいという考えは、自分自身の心を少しずつ傷つけていきます。
モフ子は、自分の中にある正直な心の声を聞きました。
悪いことをしてはいけない、誰かに迷惑をかけてはいけない。
その小さくて静かな声が、モフ子の本当の自分の正直な声でした。
モフ子は勇気を持って、その声に従いました。
流されなかったのは、特別な力があったからではありません。
ただ、自分の声を聞き逃さなかったことと、大事なことを守るという勇気があったからです。
自分の心に正直に生きること。
それが、自分の人生に責任を持つということではないでしょうか。