「あなたは立派な歌手よ」

森の朝は、小鳥の歌声で始まります。

木の枝の上で、小鳥はいつも夜明けと共に歌い始めます。

モフ子は、この小鳥の声で目を覚まします。


「おはよう。小鳥さん」

「モフ子。私の悩みを聞いてくれる?」


小鳥は言いました。

「私、歌手になりたいの。歌手になれると思う?」

小鳥の言葉に、モフ子は首を傾げました。


「小鳥さんは、いつも歌をうたっているじゃないの」

小鳥は首を振ると言いました。

「違うの。本当に上手いプロの歌手になりたいの」


モフ子は小鳥に聞きました。

「小鳥さんは毎朝歌っているだけじゃダメなの?」

小鳥は言います。

「わたしが夢みているプロの歌手は、みんなを、わたしの歌で楽しませることなの」


モフ子はにっこり笑いました。

「あなたが夜明けに毎朝この森で歌っているでしょ。私はその歌声で、今日も一日が始まるって感じるわ」

小鳥は目を丸くしました。

「あなたは、立派な歌手と同じよ。だって、この森のみんなをあなたの歌で元気に楽しませてくれているわ」


モフ子は、やさしく小鳥に言いました。

「あなたが森の中で歌い続けていること、それがもう立派な歌手ということじゃないのかしら」

小鳥は黙って聞いていましたが、その顔はなんだか自信にあふれてくるようでした。


次の朝、小鳥はいつもより少しだけ大きな声で歌いました。

森に歌声が広がっていき、動物たちがその歌声を楽しそうに聞いています。

小鳥は気がついたのです。

私の歌を楽しみに待ってくれている仲間がいるということを・・・・。


あとがき

何かを成し遂げたいと、夢に向かう時、私たちは何を求めますか。

注目ですか、喝采ですか。

でも毎日歌い続けている小鳥は、もうすでに立派な歌手です。

それは、毎日歌い続けて、他を楽しませているからです。

夢はいつか叶えるものではなく、今日も続けることの中に、すでにあるのかもしれません。