「森の中の静けさ」

ある日、いつも元気に森を飛び回っていたリスのコロが、大きな木の根元で寂しそうに座っていました。

どんぐりを集めながら、歌を歌っていたコロでしたが、今日だけはとても悲しそうでした。

古い木の根元で、うつむいたまま、動こうとしません。


「リス君どうしたんだろう?」動物たちは、心配そうに言いました。

タヌキが言うには、リスのコロの妹さんが交通事故で亡くなったということです。

「そっとしておいたほうがいいよ。時間がたてば元気になるさ」動物たちは、そんなリスを見つめるだけでした。


夕暮れになって、モフ子はそっとリスのコロの隣に座りました。

何も聞きません。

「どうしたの?」とも、「元気出して」とも、言いませんでした。

ただ、静かに、隣で同じ時間を過ごしていました。


しばらくすると、コロが小さな声で言いました。

「……いなくなっちゃったんだ」

リスのコロの目に大粒の涙がこぼれ落ちました。


モフ子は、それ以上なにも聞きませんでした。

リスのコロの手に、そっと自分の手を重ねます。

森には風の音だけが、静かに流れていました。

次の日も、モフ子は同じ場所へ行きました。

やっぱり、何も言いませんでした。


動物の仲間たちは聞きました。

「いつもそばにいるだけで、何か言ってあげないの?」

モフ子は、 静かに首を振りました。

「今はね、 言葉が入ってこない時もあると思うの。だから、 そばにいるだけで、一人じゃないって、感じてもらえたらそれだけでいいの」

モフ子は、納得したように自分に言い聞かせるように言いました。


その日の夕暮れ。

空がオレンジ色に染まるころ、 リスのコロがぽつりと言いました。

「モフ子……。いつも来てくれて、ありがとう」

リスのコロの言葉はそれだけでした。

でもその言葉は、 森の静けさの中で、 とてもあたたかく響いたのです。


あとがき

モフ子は、無理に元気づけようとはしませんでした。

「頑張って」とも、「早く元気になって」とも、言わなかったのです。

悲しいときは、悲しいままでいていい。

そのようなことを、そっと教えているようでした。

人は、悲しみを無理に消そうとすると、もっと苦しくなることがあります。

モフ子は、それを知っていました。

だから今日も、何も言わずに、そっと隣に寄り添うように座っていたのです。