日本は急速に高齢化が進んでおり、高齢者でもハンドルを握らなければならない事情があります。
都市部のように交通インフラが充実していればいいのですが、地方に行けば公共交通機関が少ないため、高齢者にとって自家用車が生活必需品となっています。
都市部においても、自家用車があることで便利な暮らしをしていたことから、高齢になっても車を手放すというこはできないでいます。
交通事故の悲劇
高齢者にとって車は生活の一部であり、特に地方や都市圏の郊外では、買い物や病院の送り迎えなどに欠かせない移動手段となっています。
このことから、高齢ドライバーにおける事故のニュースは後を絶ちません。
先日も、埼玉県熊谷市で下校途中の子供の列に高齢者ドライバーの車が突っ込み、小学生の女の子が意識不明の状態で救急搬送されました。
加害者は84歳の男性で、今年の3月に免許を更新し、久しぶりにハンドルを握ったということです。
横断歩道の信号は赤で、運転者は横断歩道の一つ先の交差点の信号を見て直進してしまったと供述しています。
しかし、どのような状況下でも、横断歩道に子供を確認すれば一時停止するのがドライバーとしての常識です。
このように、高齢になると認知機能が衰えることから、状況判断がすぐにできないということが考えられます。
交通事故は当事者にとっても被害者にとっても、取り返しのつかない悲劇を生み出します。
交通事故に遭われた被害者とその家族においては、失われた命や健康などは二度と元に戻ることはありません。
加害者の家族においても、もっと強く運転を辞めさせておけばよかったという思いに苛まれます。
高齢ドライバーによる事故は、被害者、加害者や周りの家族といった人々の人生に大きく影響を及ぼす深刻な問題になるのです。
高齢者と身体的衰え
高齢になると判断力や反応速度の低下、視覚や聴覚といった、運転に必要な能力が少しづつ衰えてきます。
このような変化が重なることで、高齢者の運転中のリスクが高まってくるのです。
たとえば、アクセルとブレーキを踏み間違えるミスや、突然の判断場面でパニックになり衝突事故につながるケースが増えています。
これらのリスクは、健康状態や運転経験によって個人差がありますが、一般的には加齢による判断能力の衰えが主な原因と考えられます。
安全に運転を続けるためには、こうした変化を正しく理解し、自分の運転能力を知るということが大切です。
高齢者の運転技術
高齢者の中には、若い頃に免許を取って長年運転しているから大丈夫と思い込んでいる人がいますが、こうした過信こそ非常に危険です。
実際、自分は問題ないと思っている高齢者ほど、注意力や判断力が低下していることに気づいていない場合があります。
その結果、停止線でしっかり止まらなかったり、カーブで大きく膨らんで車線をはみ出したり、安全確認をせずに道路に進入したりと、危険な運転をしてしまうことがあるのです。
こうした状態で一度でも事故を起こせば、取り返しのつかない事態になりかねません。
しかし、そうした人に限って「自分は大丈夫だ」という根拠のない自信を持っていることが多いのです。
そのため、70歳以上の高齢者が運転免許を更新する際には、自分の運転能力を正しく知るために運転技能講習を受けることが義務付けられています。
この講習を通じて、自分の状態を客観的に理解し、安全運転を心がけるきっかけにすることが求められているのです。
高齢ドライバーの免許更新
70歳を過ぎると、運転免許を更新するためには高齢者講習を受ける必要があります。
さらに、75歳以上になると認知機能検査が追加され、この検査に合格できなければ免許を更新することはできません。
しかし、高齢者が運転中に反応が遅くなったり、危険な運転をしていたとしても、実際に事故を起こさない限り免許を取り上げることはできないのです。
高齢者講習は免許を取り上げるためのものではなく、加齢に伴って身体の機能が衰えることを理解し、自分の運転能力を客観的に見直してもらうためのものです。
したがって、最終的にはできるだけ運転を控える方向に導くことを目的としています。
しかし、この講習を受けて免許を更新できた高齢者の中には、自分はまだ運転に問題がないと勘違いしてしまう人も少なくありません。
このような誤解を防ぐためには、高齢者自身が講習の目的を正しく理解し、自分の運転能力を冷静に見極めることが重要です。
免許返納を考える
交通事故を未然に防ぐためには、高齢者自身が運転免許を自主的に返納することが必要です。
特に、75歳を迎えたら運転を辞めると決断することで、悲しい事故や不幸を防ぐことができます。
家族も、運転を続けさせないように説得をする努力が必要です。
もし事故が起きてしまった場合、あの時やめさせていればよかったと後悔することになりかねません。
たとえ大きな事故でなくても、車を擦るような小さなトラブルが増えてきたら、それは注意が必要なサインです。
こうした兆候になったら早めに運転免許の返納を考えるべきで、さもなければ重大な事故につながる可能性があるのです。
免許返納代行会社
多くの高齢者は、自分の運転はまだ大丈夫と思い込んでいて、家族が説得しても耳を傾けないケースが少なくありません。
また、運転を辞めることが生活の自由や自立を制約するため、簡単に辞める決断ができない事情があることも理解できます。
しかし、いつ何時、事故が起こる可能性があるのです。
家族がいくら歳だから運転を止めてと説得しても、聞く耳を持たない高齢者が多くいます。
そのような場合に、家族に代わって高齢者に免許返納の説得をする専門の代行サービス会社があることをご存じでしたか。
こちらのサービスでは、家族の代わりに高齢者に免許返納を説得して、運転を辞めることをサポートしてくれます。
高齢者の免許返納が持つ課題
高齢者から免許を返納させることは、自立した生活に便利な移動手段を取り上げることでもあります。
その結果、高齢者の外出の機会を減らし社会とのつながりを失うきっかけになり、生活の支障をきたすのです。
つまり、高齢ドライバーの事故が多発しても、一概に高齢者に運転をやめさせるという解決策だけでは、現実的な対応が難しいこともあるといえます。
特に地方では交通インフラが十分に整備されておらず、車がなければ買い物や病院への通院が難しい地域が多くあります。
こうした地域では、免許返納は生活の自由や自立を奪うことにつながり、高齢者にとって大きな負担となるのです。
地方では、乗り合いタクシーや買い物や病院への送迎サービスといった取り組みが行われていますが、十分に普及しているとは言えません。
このような背景を踏まえると、免許返納を進めるだけでは解決できない社会的課題が多く存在しています。
この問題に対処するためには、自動車の安全技術の進化が待たれます。
たとえば、自動運転技術や事故防止機能を備えた車の開発を進めることで、高齢者が安全に車を利用できる環境を整えることができるのです。
高齢者には車は危ないので使わせないというのではなく、高齢者が安全に車を運転できるように、自動車の安全対策を考えることが急務であると考えられます。
高齢者の免許返納は一つの選択肢に過ぎず、高齢者の生活や自立を守るためには、社会問題を含めて考える必要があるのです。
しかし、今のところ高齢ドライバーが絡む交通事故といった悲劇はなくならないことから、できるだけ高齢になったら運転免許の自主返納を考えてもらいたいと願います。