ある日突然、あなたの家に「警察です」と名乗る電話がかかってきて、
「あなたに逮捕状が出ています」と言われたら、あなたは冷静に対応できますか。
今回は、実際に60代女性の身に起きた恐ろしいケースをご紹介します。
事件の流れ
ある日、その女性の自宅の電話が鳴りました。
受話器を取ると、相手は警察官を名乗る男で、いきなり耳を疑うような言葉を突きつけてきます。
「〇〇さんですね。先日、暴力団員の男を逮捕しました。その男の供述で、あなたに現金400万円を渡したと言っています」
警察官を名乗る人物から突然このような話をされれば、とても冷静ではいられません。
「どういうことでしょうか」
驚きながらもそう質問すると、男は語気を強めてこう言い放ちます。
「隠しても分かっているんだからな!」
最初は何を言っているのか分からない状態で聞いていた女性も、ことの恐ろしさに心臓が高鳴り、頭の中がいっぱいになってきてしまいました。
全く身に覚えのないこととはいえ、警察官を名乗る人物からいきなり強い口調で凄まれれば、平常心を失って誰しもパニックになっても仕方ありません。
詐欺師の手口
しかし、これこそが詐欺師の仕掛けた卑劣な罠なのです。
犯人は、ターゲットが恐怖心で冷静な判断力を失うことを最初から計算しています。
あえて声を荒らげて威圧し、パニックに陥れることで、こちらの心理を巧みに操るのです。
女性が驚き、「私は知りません!」と必死に自分の潔白を証明しようとした瞬間、
詐欺師はそのタイミングを逃さず巧妙に次の罠を仕掛けてきます。
「これから、簡単な取り調べをします」
警察官の口調がややおとなしくなると、女性の個人情報を聞き出してきます。
- 住所
- 名前
- 家族構成
- 銀行口座番号
- 暗証番号
女性は、警察官を名乗る人物の質問に、次々と大切な情報を答えてしまったのです。
冷静に考えれば、電話での取り調べなどあるわけがありません。
しかし、パニックに陥っている女性は、言われるままなすすべもなく答えてしまったのです。
実は、ここがこの詐欺の最大の危険ポイントです。
「犯罪者として疑われている」と思い込まされると、人は誰でも冷静な判断ができなってしまうからです。
とにかく疑いを晴らさなければと焦るあまり、自分の潔白を証明しようとして、相手の指示にすべて従ってしまうのです。
しかし、今回は個人情報をすべて聞き出した後も、詐欺師の攻撃はこれだけでは終わりませんでした。
パニック状態の女性をさらに追い詰めるように、今度は信じられないものを送りつけてきたのです。
メールで届いた偽の逮捕状
さらに、恐怖で震える女性へ追い打ちをかけるように、一通のメールが届きます。
そこにはなんと、「逮捕状」と書かれた書類の画像が添付されていました。
もっともらしい公印や書式が並ぶその画像を目にした瞬間、女性の中で不安は一気に現実味を帯び、恐怖は頂点に達します。
しかし当然ながら、これもすべて詐欺師が巧妙に仕組んだ罠なのです。
しばらくすると偽の警察官から女性の元に電話がかかってきます。
完全にパニックに陥った女性に対して、詐欺師はついに本性を現しこう告げます。
「このままだと裁判にかけられ、すぐに警察官があなたを逮捕しに行きます。ただ、逮捕ではなく在宅起訴にする方法が一つだけあります」
詐欺師は、いかにも優しく説明します。
「供託金として100万円を、今すぐ指定の銀行口座に振り込んでください。そうすれば、逮捕ではなく執行停止になります」
一見すると、もっともらしく聞こえます。
しかしこれは、冷静に考えればおかしな話です。
法律の専門家や、第三者が聞けば、すぐに矛盾に気づく内容です。
それでも、「警察が逮捕に来る」と言われた状況では、その内容を冷静に考える余裕はありません。
ただ一つ、頭に浮かぶのは、「逮捕だけは避けたい」というその思いだけです。
そして女性は、言われるがままに、 指定口座へ100万円を振り込んでしまったのです。
人はどうして騙されるのか
今考えるとおかしな話ばかりです。
警察官が、電話で逮捕状を執行したり、供託金で逮捕が免れることなどないし、供託金など、そもそもそのような時に使われるようなお金でもないのです。
さらに、振込先の銀口座が個人名だったことも、後から考えればおかしな話だったのです。
しかし、「自分は絶対に騙されない」と思っている人ほど、詐欺師は人間の心理を熟知したプロですので、一度信じ込ませたらもっとも騙しやすいと言われています。
彼らが狙うのは、まさに「不安」や「焦り」といった心の揺らぎを、うまく利用しているからです。
突然の電話でターゲットを極限のパニック状態に陥れることで、正常な思考力を奪い、自分たちのシナリオ通りに動かすという手口で、相手を極限状態まで追い込むということです。
そこで、被害を防ぐためのシンプルな「4つの鉄則」を、お教えします。
- 一呼吸おいて、冷静さを保つ: どんなに急かされても、威圧されても、相手のペースに乗らずに落ち着いて行動します。
- その場で絶対に情報を教えない :名前、住所、家族構成、銀行口座、暗証番号など、大切な個人情報は見知らぬ人に対して絶対に口にしてはいけません。銀行員であってもパスワードなどは聞いてこないのです。
- 自分で調べた番号に掛け直す :相手の所属部署と名前を聞き、相手が言った電話番号ではなく、電話帳などで調べた「本物の警察署」の番号に電話をして確認します。
- 第三者に相談する:誰かに相談することで、心が冷静さを保つことができます。詐欺師もそのところを知っていて、そばに誰かいないことを確認したり、一人の場所に誘導してきます。
慌てず誰かに相談
警察官から逮捕と言われたりすると、誰かに知られたくないという思いが生まれるかもしれませんが、しかし、あわてず誰かに相談して冷静さを保つことが大事です。
今回の出来事は、決して特別な話ではありません。
誰の身にも起こり得る、とても身近な危険です。
だからこそ、「おかしいな」「怖いな」と思ったら、まずは電話を切り冷静になって誰かに相談することを守って下さい。
身近に相談できる人がいない場合は、決して一人で抱え込まず、以下の公的な相談窓口を利用しましょう。
- 消費者ホットライン(国民生活センター): 188 (局番なし)
- 警察相談専用電話: #9110
慌てないことと、相手のペースに乗らないことが重要です。
そのことが、あなたの大切な財産と生活を守る一番の盾になるからです。
このブログでは、詐欺に騙されないということを知るために、いろいろな詐欺の手口を紹介しています。「高齢者を詐欺から守る」というアーカイブをご覧になって、安心した生活を送るようにして下さい。