なりすまし詐欺が最初に事件として認知され、社会的な問題として広く知られるようになったのは、2003年(平成15年)頃です。
鳥取県警の米子警察署が、孫や家族を装って電話をかけ現金を振り込ませる手口に対して、初めて「オレオレ詐欺」という言葉を用いて注意喚起を行いました。
この特徴をとらえたネーミングがマスコミを通じて報じられ、全国の警察や社会に一気に浸透していったのです。
ただ、この年だけでなりすまし詐欺の認知件数が約6,500件あり、被害総額は約43億円に達しました。
しかし、20年以上経った現在でも、なりすまし詐欺は減るどころか、警察庁が発表した統計によると、2025年のなりすまし詐欺の被害総額は約1,121億円になるということです。
巧妙化した手口
なりすまし詐欺の被害がいっこうに減らない最大の理由は、犯人たちの手口が恐ろしいスピードで巧妙化、多様化しているからです。
最初は電話口で「オレだよ、オレ」と名乗る単純なものでしたが、現在では、次のように手口が悪質な進化を遂げています。
- 架空請求・還付金詐欺: 身に覚えのない料金を請求したり、「お金が戻ってくる」と騙してATMへ誘導し、お金を振り込ませる。
- 家族の絆につけ込む詐欺: 「会社の重要な書類をなくしてしまった」などとパニックを煽り、親心や家族を心配する気持ちにつけ込んで送金させる。
そして最近、最も多発しており警戒が必要なのが「ニセ警察官詐欺」です。
警察官を装って「あなたの口座が犯罪に使われている」などと嘘をつき、キャッシュカードや現金を騙し取ると言う手口です。
驚くべきことに、なりすまし詐欺の被害額のうち約985億円の金額が、この「ニセ警察官」による被害で占められているのです。
ニセ警察官詐欺
犯人は本物の警察官を装い、以下のような巧妙なステップで被害者を追い詰めていきます。
「〇〇警察署の生活安全課です。逮捕した詐欺グループが、あなたの個人情報を持っていました」「あなたの銀行口座が犯罪に使われています」 このように突然電話をかけてきて、まずは相手を極度の不安に陥れさせます。
そして、冷静な判断力を奪ったあと、主に「2つのパターン」でお金を騙し取ろうとします。
「口座を保護するために、今から私服警官をそちらの自宅に向かわせます」と言葉巧みに誘導し、家までやって来た偽の警察官にキャッシュカードを渡させて持ち去り現金化します。
他には、「あなたに犯罪の容疑がかかっているので、今すぐ〇〇警察署(自宅から遠く離れた場所)に出頭してください」と無理な要求をしてきます。
「すぐには行けない」と断ると、それを逆手にとって「では、特例としてLINEのビデオ通話で調書を作ります」と誘導してきます。
そして画面越しに、偽物の警察手帳や逮捕状、さらには警察官の制服を着た姿を見せつけ、視覚的な圧力を加えることで、相手の冷静な思考を完全に奪い取り、恐怖心を植え付けてお金を振り込ませようとするのです。
日本の警察では、このようなキャッシュカードを自宅に取りに行ったり、LINEのビデオ通話で調書を取ったりすることは絶対にありません。
電話口でこのようなことを言われたら、その瞬間に「これは詐欺だ!」と見破り、すぐに電話を切るようにしてください。
詐欺師が使う5つの心理的テクニック
冷静に考えれば、オレオレ詐欺にしても、なぜあんな見え透いた嘘に騙されてしまうのかと不思議に思いますが、詐欺師たちは単なる嘘つきではなく、人間の心理的な弱点を熟知して、巧妙な罠に引っかけようとするのです。
そこで、詐欺師が使う5つの心理的テクニックについて考えてみることにします。
1. 時間的切迫感によるパニックの誘発を誘う
「今日中の午後3時までに振り込まないと会社をクビになる」「今すぐ示談金を払わないと逮捕される」など、極端に短い期限を突きつけます。
人間は強い焦りや恐怖を感じると、脳の論理的な思考を司る部分の働きができなくなる心理を利用しています。
2. 権威の悪用
警察官、弁護士、役人、医師など、社会的信用の高い肩書きを名乗ることで、このような権威のある専門家の言うことは正しいはずだと無意識に信じ込んでしまいます。
つまり、相手の言葉を疑うというハードルを大きく下げられてしまい、信用できると思い込んでしまうのです。
3. 孤立化
「会社には絶対に内緒にして」「警察に相談したら相手が激怒して事件になる」などと言い、誰かに相談することを強く禁じさせます。
第三者の客観的な意見が入ると嘘がバレてしまうため、被害者を心理的に孤立させ、詐欺師の言葉しか信じられない密室状態を作り出すことで、冷静さを失わせることと、思考をパニックにさせるようにします。
4. 思い込みの増幅
第一声で「あ、息子だ」と一度思い込ませてしまえば、詐欺師の勝ちです。
人間には自分の思い込みを支持する情報ばかりを集め、違うという情報を無視するという心理が働きます。
だから、「俺は絶対に詐欺にかからない」と言っている人ほど、ここを突破すれば、簡単に騙すことができてしまうのです。
5. 段階的要請
詐欺師は、最初からお金を要求するのではなく、まずは「携帯電話を落として番号が変わった」という些細な連絡だけをして電話を切ります。
そして数日後に「実はトラブルに巻き込まれて…」とお金を要求します。
人間には一度小さな要求を受け入れると、次の大きな要求も断りにくくなるという心理があり、そこを巧妙に突いてきます。
劇場型詐欺の手法として、警察官や弁護士、医師など次々に出てくることで、全てが真実に思えてしまうのです。
そして最後に、お金を要求するということをして納得させてしまいます。
これらのように、詐欺師は被害者の「冷静に考える力」を意図的に奪う手順をマニュアル化していて、自分は騙されないという自信すらも失わせることができるのです。
シニアが狙われている
詐欺師はあらゆる年代の人を狙いますが、中でも私たち高齢者は騙しやすいターゲットとして格好の標的にされています。
なぜ、シニアが狙われやすいかというと、そこにはいくつかの背景があります。
- 他人を信じやすいといった 人を疑わない純粋な心や優しさにつけ込まれるからです。
- さらに、最新の機器やインターネットの仕組みに不慣れな弱点が利用されています。
- シニア世代も当たり前のように携帯電話を持つ時代になり、詐欺師がいつでも「個人」に直接連絡を取れるようになってしまいました。
- 電子マネーや国際送金など、金融の仕組みが便利になったことで、犯人は遠く離れた場所からでも電話口でうまく誘導するだけで、簡単にお金を奪える環境が整ってしまったのです。
このように、高齢者を囲む環境は、詐欺師にとって好都合な条件になってきたのです。
詐欺はグローバルな組織犯罪へ
さらに恐ろしいことに、なりすまし詐欺はもはや日本国内だけの犯罪ではありません。
現在では東南アジアなどに巨大な詐欺の拠点が作られ、そこから世界中のシニアに向けて組織的に詐欺の電話がかけられています。
私たちが直面しているのは、一国の犯罪という枠を超えた、完全に国境を越えた「国際的な犯罪組織」なのです。
2026年、タイ当局は、カンボジアとの国境にある詐欺グループの拠点を一斉摘発して、ここでは2万人が働いていたと思われています。
その中には、騙されて連れてこられた日本人もいて、監視のもとに毎日のように詐欺電話をかけさせられていたということです。
このように、なりすまし詐欺は一国の国内犯罪から、完全にグローバルな組織犯罪へと変貌してきています。
詐欺の手口から身を守る方法
巧妙化したなりすまし詐欺の手口から、我々は身を守る方法を知っておかなければなりません。
それにはいくつかの方法があります。
1、家族しか知らない「秘密の合言葉」を作る
「昔一緒に旅行した場所」や「飼っていたペットの名前」など、家族にしか答えられない秘密の合言葉を決めておくことをしましょう。
家族になりすまして電話をかけてきても、秘密の合言葉があれば、なりすましで騙されることはないからです。
2、必ず「自分から」かけ直す
電話がかかってきても、一度電話を切り、自分から家族などに確認の電話をかけるようにしましょう。
警察署などを語る場合は、警察署などの固定電話や内線番号などを聞いて、ネットなどで調べることをします。
少しでも不安に思ったら、最寄りの警察などに相談することをおすすめします。
(警察の生活安全課相談電話#9110)
3、固定電話は 常に「留守番電話」にしておく
在宅中であっても電話には直接出ず、留守番電話に設定しておくことが効果的です。
相手は自分の声が録音されていることを嫌がることから、相手に録音することを告知してから電話を出るようにします。
最近の機能電話は、詐欺対策として録音するとうことを知らせてからつながるようなものがあります。
本当に用事がある人や、本物の公的機関であればメッセージを残すため、内容を確認してから落ち着いて折り返すことができます。
4、「警察庁推奨のデジポリス」を活用する
警察庁は国際電話の着信ブロックや危険な番号の警告機能を備えたスマートフォンアプリを「警察庁推奨」として認定する取り組みを始めています。
信頼できるアプリを活用することで、最新の詐欺電話も自動的に弾くことができます。
5、「知る」ことが最大の防衛線
詐欺師らは、ターゲットが想定外の事態にパニックになることを前提にシナリオを組んでいるため、あらかじめ知識を持っていて「あ、これはあの手口だな」と冷静に判断することで身を守ることができます。
詐欺についての正しい知識があれば、ご自身の身を守るだけでなく、ご友人やご近所の方が騙されそうになっている時に、いち早く異変に気づいて止めることができます。
ハピネスシニアブログでは、同世代の皆さんに最新の詐欺手口や対策をわかりやすく説明して、防犯対策になればいいかと考えて活動しています。
詐欺被害を防ぐために
これからも、なりすまし詐欺は私たちの想像を超える手口で進化していくと考えられます。
例えば、AIを使って家族の声をそっくりに複製したり、著名人の画像を巧妙に加工して信用させたりと、犯人たちは私たちが思いもしないような罠を仕掛けてきます。
特に一人暮らしをしていると、突然の電話にふと不安を覚えたり、いざという時にすぐ相談できる相手がいなかったりと、どうしても騙されるリスクが高くなってしまいます。
だからこそ、詐欺師の巧妙な心理操作に引っかからないための正しい知識を持つことが、自分自身の心と大切な財産を守るための最強の盾になるのです。
この「ハピネスシニアブログ」では、私たちシニア世代が毎日を安心して笑顔で暮らせるよう、これからも最新の防犯情報や具体的な対策を発信し続けていきます。
日頃からこうした情報に触れ、防犯へのアンテナを高く張っておくことが、私たちが心豊かに、そして安全に毎日を楽しむための第一歩だと信じています。
これからも当ブログを通じて一緒に学び、知識をアップデートしながら、お互いの防犯意識を高めていきましょう。
