みなさんは、だれかに「すごい!」って言われたいと思ったことはありませんか。
それはとても自然な気持ちです。
けれど、その気持ちのために嘘をついてしまうと、心はだんだん苦しくなっていきます。
このお話は、そんな小さな嘘をついたサルの物語です。
モフ子と仲間たちとのやりとりを通して、「ありのままの自分でいること」の大切さを感じてみてください。

森の広場で、モフ子や仲間たちが元気に遊んでいました。
シカが高くジャンプするのを見て、みんなが「すごい!」と拍手喝采します。

木の上からみんなが楽しそうにしているのを見ていたサルは、ぼくも、みんなからすごいって言われて注目されたいなと思いました。
でも、僕は自慢できることなんて一つもないし、どうすればみんなから注目されるのだろう。

そこで、サルはみんなから注目されるように小さな嘘をついてしまいました。
「昨日、森でとってもおいしい果物を見つけたんだ!」
サルは自慢げにみんなに言いました。

みんなは、「わぁ、すごい!」と驚きの表情を浮かべます。
「よかったら、みんなで、そこに行かないか」
サルの言葉に、みんなは喜んで歓声をあげ、駆け出しました。

けれど、サルが案内する場所に来ても果物がなる木はどこにもありません。
「おかしいな…」
みんなであたりを探しますが見つかりません。
サルはとっさに言いました。
「きっと、誰かに食べられてしまったんだ」
サルの言葉に、みんながっかりします。

しかし、サルは続けて言いました。
「この近くに、光る石があるのを思い出したんだ。お詫びに、その石のありかを教えるよ」
モフ子たちは喜びました。
「 光る石なんて、すごいじゃない!」
動物たちはワクワクして走り出したのです。

しかし、サルが案内した場所には、光る石などありませんでした。
「変だな、たしかここらあたりにあったんだけど」
サルは、不思議そうにあたりを探しながら言いました。
「だましたんだろ」とキツネは怒りだしました。
サルはあわてて、
「ま、まって! あの石は夜になったら光るのかもしれない!」
「嘘を言うな、もう騙されないぞ!」
動物たちは、サルの言葉をまったく信用しなくなってしまいました。

森のかたすみで、サルがぽつんと座っています。
誰もサルのまわりに寄りつきません。
モフ子は、そのサルの横に座ると、
「どうして、あんなような嘘をついたの」
「ぼく、みんなから注目されたかったんだ」
サルは静かにうつむきました。

「僕、寂しかったんだ。だから、嘘をついてでもみんなと友達になりたかったんだ」
サルの言葉に、モフ子は大きなため息をつきました。
「でも。嘘は良くないわ。好かれたいっていう気持ちはわかるけど、嘘をついて注目を集めても心が苦しくなるだけよ」
サルは大きく頷きました。
「それに、いちど嘘をつけば、その嘘がバレないかとまた嘘をつくの。そしてますます心が痛むのよ」

「ありのままの、おサルさんでいいじゃない。へんに着飾ったり嘘をついて人気者になっても、ほんとうの友だちはできないわ」
モフ子の言葉に、サルは涙を拭いました。
「にこにこ笑って、正直でいるときこそ、心は自由に輝くのよ。そうすれば自然と友達もできるわ」

サルは、動物たちの前で正直に話しました。
「ほんとは、みんなと仲良くしてほしくて、嘘をついてしまいました。ごめんなさい」
動物たちは顔を見合わせ、うなずきました。
「次からは、正直に仲間に入れてと話せばいいんだよ」
クマの言葉に、サルはにっこりと笑って頷きました。

みんなの前で正直に話したことで、サルの胸の重さはすっと消えました。
「正直に話すと、心がこんなに楽なんだ」
サルの言葉に、モフ子はにっこり笑って言いました。
「ありのままの自分でいるときが、心が自由でありいちばん輝けるのよ」
あとがき
サルはみんなに正直に話すことで、胸の重たさから解放されました。
それは、嘘をやめたからではなく、ほんとうの自分であり続けることをしたからです。
私たちは、ときには誰かに認められたくて背伸びをしたくなることがあります。
でも、いちばん輝けるのは「ありのままの自分」でいるときです。
この物語を読み終えたみなさんの心も、ありのままの自分でいることで、心が軽くなることを知ってもらいたいのです。