
元気いっぱいのうさぎのモフ子は、いつも跳ねまわってみんなと遊んでいました。
その明るさとやさしさで、森の仲間たちからとても慕われています。

モフ子とタヌキはとても仲良しです。
森をかけまわり、木登りをしたり、川で水遊びをしたりして一日をすごします。
モフ子のまわりに自然と仲間が集まり、森じゅうにモフ子の笑い声がひびき、みんなは楽しくなるのでした。

ある日、モフ子はいつものようにタヌキと遊んでいると、大きな木に、丸々とした果実が実っているのを見つけました。
「わあ、すごくなっている」
モフ子とタヌキは歓声をあげます。

モフ子たちが見つけた木の下に、森の仲間たちも集まってきました。
「たくさんなった果実を、みんなで明日にでも分け合って食べよう」
モフ子の提案に、仲間たちは声を合わせて「やったー!」と喜びました。

モフ子たちが喜んでいる様子を、近くで何か悪だくみをしていそうな一匹のキツネがいました。
キツネは目を細めて、「みんなで分けたら、ぼくの分は少なくなってしまう」と、つぶやくのでした。

その夜、みんなが眠っているころ、キツネはそっと木のところへやってきました。
「だれも見てないし、だれにもばれはしない」と言いながら、たくさんの果実をいくつもの袋につめました。

次の日、木の前に集まった動物たちは、果実がずいぶん減っていることに気づきました。
「へんだわ。たくさんあった実が…。それに、下にもいっぱい落ちている」
モフ子は首をかしげました。
「先に誰か獲っていった奴がいるんだ」と、みんなは大騒ぎです。

遠くで見ていたキツネは、動物たちの声を聞きながら心が苦しくなってしまいました。
ぼくのせいで、みんながあれだけ楽しんでいたものを奪ってしまったんだと思ったからです。
キツネは顔もあげられずに、仲間の輪から離れていきました。

その夜、キツネはなかなか眠れませんでした。
「ぼくのものだ!」と、独り占めしてよろこんで果実を獲ったけれど、心はなんだか晴れません。
分からなければいいと思っても、自分の心にはうそをつけないからです。
そして、罪悪感とともに、不安がふくらんでくることに気がついたのです。
そこで、キツネは明日になったら正直にみんなに謝ろうとしました。

きつねは勇気をふりしぼって、仲間の前に立ちました。
「じつは…ぼくが夜のうちに、果実をこっそり持っていったんだ」
みんなはおどろいて目を丸くしました。

「正直に言ってくれてありがとう」
モフ子はやさしくキツネに声をかけました。
「これからは、自分だけ良ければいいという考えはやめて、みんなで分け合い助け合いましょ」
キツネは大きく頷きました。

その日から、森の果実はみんなで仲良く分け合うことになりました。
キツネも仲間の輪に入り、みんなと一緒に果実を取り分けます。
みんなで分けあった果実をひと口食べると、胸のつかえがすっと消えて、心から楽しくなったのです。
動物たちは笑顔で果実をかじり、森じゅうに幸せな笑い声が広がっていきました。

森の夜空には、きれいな星がまたたいています。
モフ子はその光を見ながら思いました。
自分さえ良ければいいという考えではなく、みんなと仲良く誠実に生きることで、星のように輝く社会になるんだ。
モフ子は胸に手をあてて、やさしくほほえみました。
けんかをしても、『ごめんね』と言えばすぐ仲直りすることができるように、自分勝手な気持ちではなく、みんなが仲良く正直に生きることが、本当の安らぎと喜びがあるということを学んだモフ子でした。