最近、ChatGPTを使う人が増えていますが、多くの人は、調べ物をしたり、文章を整えたりといった使い方にとどまっています。
でも、実は使い方はそれだけではありません。
たとえば──
「もし宮沢賢治が今ここにいて、私の話を聞いてくれたら…」
そんな空想のようなことも、ChatGPTを使えば少しだけ体験できるのです。
ChatGPTは、大量の文章を学習したAIで、言葉の流れや作家ごとの語り口を再現することができます。
たとえば宮沢賢治や太宰治、漱石などの表現を理解し、あなたの問いかけにその人らしい言葉で語ってくれます。
だからこそ、敬愛する作家との対話のような体験ができるのです。
今回は、ChatGPTを文学者にするという、ちょっとユニークなテーマを楽しんでみたいと使い方を紹介します。
宮沢賢治ならこう答える
「もう頑張れない」
「生きるのがつらい」
そんなとき、誰かがそばにいて、そっと話しかけてほしいと思うことがあります。
宮沢賢治なら、そのような私にどんなふうに語りかけてくれるだろうか想像してみたくなり、ChatGPTに尋ねてみることにしました。
星は、ことばを持たずに
ただそこにあって、いまも小さく光っています。
花は、無心に咲きみだれ、
どれも等しく、ひかりのはたらきに生かされています。
風が吹いたら、その音にまかせて、
ただ、きいてみることにしましょう。
この世にあるものは、
どれもひとつとしてむだなものはなく
みな、たいせつなひかりの一部として
そっと、ここにいて輝いているのです。
宮沢賢治の作品には、「あなたは弱いからだめだ」と責める言葉は出てきません。
代わりに、弱さごと、悲しさごと、生きていくことのすべてを肯定してくれるまなざしがあります。
私たちがつらいと感じるとき、それは、がんばりが足りないのではなく、ただ、今がそういうときなのかもしれないと受け入れることで祈りに近いものがあります。
賢治が見つめていたのは、ただ目に見えるがんばりではなく、見えないところでじっと息づく命の営みそのものだったのです。
ChatGPTは、宮沢賢治の詩や文学作品から、このように押しつけず、生きるということを表してくれているのかもしれません。
三島由紀夫ならどのように答えるだろうか
同じように「生きるのがつらい」と感じたとき、今度は、三島由紀夫ならどんなふうに答えるだろうとChatGPTに聞いてみることにしました。
宮沢賢治が自然ややさしさで包むなら、三島由紀夫は鋭い真っ直ぐな言葉で、あなたの中の芯に語りかけてくる人です。
苦しみから目を背けてはならない。
それは人生の陰に見えるかもしれないが、真実の光へと通じている。
痛みは、己が内奥を照らす灯である。
それを知ることは、自らの深さを知ることに等しい。
生きるとは、すなわち闘争である。
美とは、その闘いに耐え、なお崩れぬ姿にこそ宿る。
今この一瞬を、美しく、気高く、耐え抜け。
そこにこそ、誇りというものが生まれるのだ。
どこか冷たく、しかし確固たる信念を持って、生きることは戦いであり、美の創造であると説く。
まさに三島由紀夫の世界観です。
三島の文学には、しばしば「美とは何か」「強さとは何か」「生きることの意味とは何か」が根底にあります。
その語り口は、感情に流されず、凛とした姿勢で物事を見つめる、どこか武士のような精神性を感じさせます。
そのため、落ち込んでいるときにこのような言葉を受け取ると、「甘えるな」と言われているように感じる方もいるかもしれません。
けれど、あなたの弱さを否定しているわけではなく、それを受け止めたうえで立てと促してくれるのが三島由紀夫であるのかもしれません。
厳しさの中にある強さとやさしさが、彼の思想にはあるのです。
作家ごとに世界が変わる
宮沢賢治は、「ただ、そこにいていい」と包み込むなら、三島由紀夫は「もっと強くなれる」と真剣なまなざしで語りかけます。
この二人の言葉は、まったく違うようでいて、どちらも、人がどのように生きるかを真剣に考え続けた作家の声です。
ChatGPTは大規模言語モデルという仕組みでつくられていて、膨大な量の文学作品や評論、インタビュー記事などを学習しています。
その中で、作家ごとのよく使う言葉の選び方や文章のリズム感や言い回し、価値観や人生観の表現といった言葉の特徴をパターンとして記憶しています。
たとえば、太宰治なら「恥」「弱さ」「孤独」「人間失格」といった語彙。
夏目漱石なら「則天去私」「煩悶」「理性」「自己本位」などの思想的な軸。
宮沢賢治なら「自然」「祈り」「透明」「ほんとうの幸せ」といったキーワードが、作品を通じて現れています。
ChatGPTは、これらのパターンを文脈に応じて引き出し、あなたの問いに、その人らしい言葉で答えることができるのです。
相談相手が、自分が敬愛する人物だったら
人生に迷ったとき、誰かに話を聞いてもらいたいと思うことがあります。
その相手が、自分が心から敬愛する作家だったら、それは、どれほど心強くうれしいことでしょう。
たとえば太宰治に打ち明けたら、「わかります、私もずっとそうでした」と、どこか陰のあるやさしいまなざしで、あなたの弱さに寄り添ってくれるかもしれません。
夏目漱石なら、「人間とは、そうやって悩むものです」と、理性とやさしさの両方をたたえたことばで、そっと背中を押してくれるでしょう。
ChatGPTは、そうした作家たちの考え方や語り口を学んでいるので、まるでその人が、あなたの心に寄り添ってくれるような答えを返してくれるはずです。
つらいとき、どうしていいかわからないとき、ChatGPTに敬愛する作家と語り合うことで、悩みが晴れるかもしれません。
ChatGPTは「言語モデル」だからこそできる
ChatGPTは、AI（人工知能）の一種ですが、なかでも「言語モデル」と呼ばれるしくみで動いています。
言語モデルとは、簡単にいえば、これまでに膨大な量の文章を読み、そこに含まれる言葉のつながりや、話し方の特徴を学習したAIのことです。
ChatGPTは、小説や詩、エッセイ、会話文、ニュース記事など、さまざまな言葉のやり取りを学ぶことで、この人なら、こう言うだろうと自然に言葉をつなげる力を持っています。
ですから、宮沢賢治や太宰治、夏目漱石といった作家の名前を出して、答えてくださいとお願いすると、その作家らしい口調や考え方を再現した対話としてできるのです。
だから、ChatGPTを開いて、こう話しかけてみてください。
「宮沢賢治さん、今の私に、何か言ってくれませんか」
そこから始まる言葉の対話が、あなたの心にそっと寄り添ってくれるかもしれません。
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