
ある朝、モフ子は両手にはたくさんの木の実を抱えて、森の奥に向かって歩いていきます。

そのモフ子の様子を、もの陰から不思議そうに見ているタヌキとリスがいました。

「あんなにたくさんの木の実を持って、モフ子はどこへ行くんだろう」
リスは首をかしげて、タヌキに聞きました。
「もしかして、木の実をどこかに隠しているんじゃないかな」
タヌキが言うのを、リスは大きくうなずきました。

「モフ子が木の実をどこかに隠しているらしい」
「毎日こっそり持ち去っているんだって」
やがて森の動物たちの間で、モフ子が森の木の実をどこかに隠しているという噂が広がりました。

誰もモフ子に確かめるように聞きませんでしたが、みんなのモフ子に対する見る目が変わっていきました。
モフ子がこちらに歩いて来ても、みんなは慌てて逃げるように隠れます。

みんなが自分のことを避けているということを、モフ子はうすうす気づいていました。
自分に対して変な噂が広がっていることも知っていましたが、モフ子は何も弁明もしませんでした。
でも、心の中ではなんだか悲しいような寂しい気持ちになっていたのです。

森の奥深く。
モフ子は古びた小屋にたどり着くと、小屋の中に入って行きました。
その様子を動物たちは、後をつけて見ていたのです。

「お爺さん。木の実を持って来たよ」
モフ子は小屋に入ると、椅子に座るシカのお爺さんに木の実を差し出します。
「いつも悪いね」
松葉杖をついたお爺さんは、二、三日前に転んで左足を骨折していたのです。
そのことを知ったモフ子は、毎日のように木の実を届けていたのです。

シカのお爺さんの世話をしていたモフ子のことを知った動物たちは、
自分たちがモフ子を疑うような目で見ていたことを、とても恥ずかしく思ったのです。

動物たちはたまらず小屋の中に駆け込んで行きました。
「ごめんなさい。僕たちモフ子を疑っていた」
リスがモフ子に抱きつくように謝ります。

その後、モフ子を含め動物たちは、おじいさんが元気になるまで、
木の実を持ってきたり、家の中の掃除を手伝うことをしました。

「でも、どうして黙っていたの?」
リスがモフ子に聞きました。
モフ子は少し考えてから、「私が好きでやっていたことだから」
夕日が差しこむ森は、ほのぼのとして静まり返っていました。