おっちゃんは、今日もいつもの喫茶店で朝から入り浸って新聞を隅々まで読んでいます。

「おい、タケル。ちょって来てみな」
おっちゃんは、喫茶店でアルバイトで働く青年に声をかけると、新聞の記事を指で叩きながら強い口調で言いました。
「驚いたもんだな。日本で詐欺で騙される金額が年間で720億円あると書かれている」
「そんなにあるんすか」
タケルも驚いたように新聞の記事を覗き込んだ。
おっちゃんはコーヒーを啜ると、「まったく、世の中どうなっているんだ」
目次
数字で見る詐欺の怖さ
「720億円って、ちょっと想像できないですね」
タケルがそう言うと、おっちゃんはゆっくり頷きながら、
「720億円というのは2024年の話で、昨年は3000億円を超えると言われているらしい」
警察庁 の発表によると、
- 特殊詐欺(オレオレ詐欺など)
👉 約 1414億円(2025年)
さらに驚くのは、
- SNS投資詐欺・ロマンス詐欺など
👉 約 1800億円以上
それらを合計すると、3000億円をこえる被害額になる。
タケルは言葉を失った。
詐欺は組織犯罪
おっちゃんは新聞をたたみ、少し前かがみになると、
「今の詐欺は、一人でやっているわけじゃなく、組織だってやっているみたいだな」
- 「電話をかける人間」
- 「お金を受け取る人間」
- 「指示を出す人間」
「役割が分かれていて、まるで会社みたいに動いているということらしい。
だから、莫大な金額が騙せれるということで、投資詐欺などは、何億という金額が1日に騙されているみたいだ」
タケルは、半分呆れたように、
「俺なんてだまされるといっても、そんなに大金持っていないですけどね」
なぜ普通の人が騙されるのか
「でも…どうして騙されるんですかね」
タケルの質問に、おっちゃんは少し笑うと、「特別な人が騙されるわけじゃないんだ」
騙される人は、
- 家族を大切に思う人
- 真面目に生きてきた人
- 人を信じる人
「こういう人ほど、引っかかってしまうみたいだ。そして、騙された人は、悔しくて精神的に参ってしまうということで、お金と一緒に心まで破壊されてしまうんだ」
詐欺から守る行動
「お金の話が出たら、全て疑ってみることだな」
詐欺師は相手を追い込んだり急がせたりしながら話を持っていくことから、どんな時でも、お金について持ち出されたら、電話を切って一呼吸落ち着いてから、第三者に相談してみることがいいと言われている。
詐欺は誰の身にも起こり得るという、身近な出来事と認識しておくことが大事なことかもしれません。
だからこそ、次のことを意識しておくと詐欺被害から逃れることができます。
- お金の話が出たらすぐに判断しないで冷静になって考えてみる
- 相手の言われるままにするのではなく、一度電話を切りこちらから必ず確認する
- 少しでも違和感があればやめて、第三者に相談する
このことを意識するだけでも詐欺被害を防げることになるんだ。
おっちゃんの言葉に、タケルは大きく頷きながら、エプロンのポケットから自分のスマートフォンを取り出した。
詐欺は身近な問題
「そういえば俺のところにも、変なショートメッセージが来たんですよ」
タケルはそう言うと、おっちゃんに自分のスマホを見せた。
画面には、『未払い料金があります。本日中に確認されない場合は法的措置に移行します』と書かれており、URLをクリックするように誘導している。
おっちゃんは目を細め、タケルのスマホを指差した。
「まさにこれが典型的な『フィッシング詐欺』の手口だな」
今や詐欺は、家の固定電話だけではなく、みんなが毎日持ち歩いているスマホの中にも、こうして当たり前のように入り込んできているのです。
巧妙化する手口と
「たとえば、メッセージのURLをクリックすると、詐欺師が作った偽のサイトに飛ばされ、そこで個人情報やクレジットカード番号を入力してしまうと、その番号を使って勝手に高額な買い物をされてしまう」
おっちゃんはコーヒーを一口飲むと、さらに言葉を続けた。
「最近では、警察官や弁護士といった『権威ある職業』を名乗って騙すケースもある」
「警察官……ですか?」
おっちゃんは、タケルの顔をまっすぐに見据えると、
「警察官になりすまし、テレビ電話(ビデオ通話)を使って直接誘導してくる詐欺が増えているらしい」
「えっ! テレビ電話なら、犯人の顔がわかっちゃうじゃないですか!?」
「ああ、それでも連中は捕まらないとタカをくくっているんだろう。恐ろしいのはその手の込みようだ」
画面越しに警察の制服そっくりの服を着た男が現れ、背景には警察署によくあるポスターまで貼ってあり、さらに偽の警察手帳まで見せられたら、すっかりパニックになって信じてしまうという心理をついているのです。
「詐欺を取り締まるはずの警察官の姿が映ったら、そりゃ信じちゃいますよ……」
タケルはゾッとしたように身震いした。
国際電話に気をつける
「いいか、タケル。本物の警察官が、ビデオ通話で捜査状況を伝えたり、お金の振り込みを要求したりすることは絶対にない。 もし、警察官を名乗る人間から、お金やキャッシュカードの話が出たら、どんなにそれらしい制服を着ていようがその時点で100%詐欺だ」
おっちゃんの言葉に、タケルは大きく頷いた。
「それに、それらの電話は海外からかかってくるので、発信先が国際通話なら詐欺に間違いないので出ないことだ」
「国際電話ですか……?」
「着信の時に、電話番号の頭に『+(プラス)』の記号がついていたら、それは海外からの電話だと思っていい」
「なるほど! 番号の先頭を見れば、日本からの電話じゃないってすぐに分かるんですね」
「だから、画面に『+』から始まる見知らぬ番号が表示されたら、絶対に出ないこと。そして、着信履歴に残っていても、間違っても折り返し電話をかけないことだ。うっかり出たり掛け直したりすると、詐欺師に『この番号は通じるぞ』と目をつけられたりするからだ」
おっちゃんはコーヒーを一口飲み、少し表情を和らげた。
「最近は、携帯電話会社に申し込めば、国際電話の着信を最初から一括で拒否してくれる無料サービスもあったり、おっちゃんはデジポリスというアプリを入れている」
知識は心の鎧になる
おっちゃんは、テーブルの上の新聞を折りたたむと、
「タケル、なぜ俺が毎日こうやって新聞の隅々まで目を通しているか分かるか」
おっちゃんの言葉にタケルは、「暇だからでしょ」と、答えた。
おっちゃんは、むせるように口に含んだコーヒーを吹き出すと、
「バカ言え。おっちゃんは、こうして毎朝、ここでコーヒーを飲みながら新聞を読んでいるのは、一番は世間の出来事を『知るため』にあるんだ」
知識は心の鎧になる
おっちゃんはタケルの目をまっすぐに見つめて言った。
「詐欺の被害に遭う人の65%近くは、高齢者なんだ」
タケルは、不思議そうに頷いた。
「歳をとると、どうしても世の中の新しい動きには疎くなりがちだからな。だからこそ、日頃から知識を得ておくことが大切なんだよ」
どんな手口が流行っているのか、詐欺師はどんな言葉で近づいてくるのか、騙された人はどんな心理状態だったのかということなど、それを知っておくだけで、詐欺は防ぐことができるということです。
タケルは自分のスマホを見つめ直し、深く息を吐いた。
確かに、SMS詐欺の手口を知らなかったら、俺も慌ててURLを押していたかもしれない。
おっちゃんが言うように、事前に知識があれば、怪しいメッセージが来ても『あ、これはニュースで見た手口だ』と冷静になれる。
それに、電話口で『必ず儲かる』と言われても『そんなうまい話はない』と立ち止まることができる。
自分を守るためには、知識を持つことが何よりも大事なんだ。
タケルは大きく頷くと、「コーヒーのおかわりどうですか」と、おっちゃんに声をかけた。

タケルは軽快な足取りでカウンターへ戻りながら、今日聞いた話を頭の中で整理してみた。
3000億円という途方もない数字は想像もつかないが、詐欺は決して遠い世界の話ではなく、自分たちの日常のすぐ隣で、今日も誰かが狙われているということだ。
何気なくコーヒーを飲んで笑い合える穏やかな日々が続くためには、そのゆとりある時間を冷酷な詐欺師たちに奪わせないためにも、おっちゃんが言うように、「知ること」が大事なことであるということをあらためて気がつくことができた。
