生きていて「さみしい」と感じるときがあります。
大切な人との別れは、取り残されたといった気持ちになって、胸の奥がぎゅっと締めつけられるようになります。
そのようなときは、なぐさめとしての立派な言葉やアドバイスなどは必要ありません。
ただ、そばに誰かがいてくれることで、さみしさは少しやわらぐのです。

リスのスネルとヘイズは、とても仲の良い友達です。
いつも一緒に遊び、兄弟みたいに笑い合っていました。

けれどある日、友達のヘイズが森を離れることになりました。
スネルはその小さな背中を見送りながら、胸の奥に冷たい風が吹きこんでくるのを感じました。

モフ子には、あんなに仲の良かった友達が去って行ってしまい、残されたリスの気持ちが痛いほど分かります。

「どうして…どうしていなくなってしまうんだよ」
リスの目から、ぽろぽろと涙がこぼれました。

モフ子は声をかけることもできず、そばに寄り添って相手の手を握ることしかできませんでした。

モフ子は、リスの隣に座り小さな手をぎゅっと握ったまま、「さみしいね…」と言うことが精一杯でした。

モフ子がつぶやいたそのひとことに、リスの心は少しだけほどけるような気がしました。
涙はまだ止まらなかったけれど、モフ子の優しさと温もりを感じたからです。

悲しみはすぐには消えません。
けれど、誰かが寄り添ってくれることで、人は立ち上がる力を取り戻せることができるのです。

リスはモフ子の手のぬくもりを感じながら思いました。
「ひとりじゃない…僕には、他にもそばにいてくれる友だちがいる」
リスは心から、モフ子の優しさに感謝しました。
あとがき
悲しみをなくすことはできません。
でも、誰かが悲しみに寄り添うことはできます。
アドバイスも、特別な言葉もいりません。
ただ「さみしいね」と共に感じ、そばにいてあげることで、それが、心を救う大切な力になるのです。
寄り添うとは、相手の気持ちを否定せず、共に感じることです。
大きなことをしなくても、そばにいるだけで人の心は和らぐことができるのです。