歳をとると、だんだん耳が遠くなるということが起こります。
私も、最初は些細な耳鳴りから始まりました。
そして次第に、右耳がなんだか聞こえにくくなってきたのです。
気になって耳鼻科で検査してもらったところ、「右耳の低音部分が聞き取りにくくなっていて、左右のバランスが悪いですね」と言われました。
幸い、補聴器を急いで作る必要はないとのことでしたが、家のテレビの音がどうしても聞き取りにくく、自分でも気づかないうちに段々と音量を大きくしてしまっていたのです。
そこで、テレビ用の手元スピーカーなども買ってみましたが、私の場合は、音が小さくて聞こえないというよりも、低音部分が聞こえにくかったために、声がはっきり聞き取れないということで、いくら手元で音を大きく鳴らしても聞きづらさは変わりませんでした。
補聴器の現実
ある日、メガネを新しく作りに行ったお店で、補聴器の試聴をする機会がありました。
補聴器というのはメガネと同じで、自分の耳の聞こえ方に合わせて周波数などを細かく調整して作るものです。
私の右耳の低音を補正する設定をしてもらったところ、驚くほどクリアに声が聞こることに感動しました。
「左耳はまだ大丈夫なので、右耳だけの補聴器を作りませんか」と勧められたのですが、金額を聞いて驚いたのは、なんと、片耳だけで30万円近くもするということです。
年金生活者の私としては、そのような大金をすぐに出すことはできず、泣く泣く諦めることにしました。
イヤホン探しの迷走
そのような時に、AppleのAirPodsが補聴器代わりになるという話を聞きました。
補聴器ほどの値段ではないことから、早速買って試してみることにしました。
確かに、自分の耳の聞こえ具合に合わせて周波数を調整できるのは素晴らしい機能です。
しかし、ノイズキャンセリングの機能が強すぎて耳が圧迫されるような不自然な感覚があり、さらにインナーイヤー型で耳の穴をすっぽり塞いでしまうため、どうしても私には馴染めませんでした。
骨伝導イヤホンとの出会い
そんな時に出会ったのが「骨伝導イヤホン」です。
耳鼻科の検査の時に、骨伝導イヤホンを使って検査したので、これを試しにテレビに繋いで聞いたところ、音がとてもクリーアーに聞きとることができたのです。
骨伝導のイヤホンは、耳を圧迫しないで使うことができるので、精神的にも肉体的にも負担がないのが利点です。
しかし、骨伝導イヤホン単体では、目の前にいる人との会話を拾ってくれるわけではありません。
iPhoneの集音機能を使おうと思っても、AirPods2とセットでなければノイズキャンセリング機能が発揮しないのです。
かといって市販の安い集音器では、周囲の雑音まで全て拾ってしまい、余計に聞き取りにくいものになってしまいます。
Pixel10の集音機能
Google Pixelにも「音声増幅」という、補聴器に近い働きをしてくれる機能があります。
Bluetoothで愛用の骨伝導イヤホンをPixelに繋いでも、スマートフォン本体が周囲の音を拾う高性能なマイクに早変わりします。
たとえば、友達とのランチの時、カフェのテーブルの上にPixelをポンと置いておくだけで、「周囲のガヤガヤした雑音を減らして、目の前にいる相手の声だけを際立たせる」ことができるのです。
だから、外での会話も相手の声がスッと耳に届きます。
さらに、Pixelの「音声増幅」機能には、ただ音を大きくするだけではない、信じられないほど細やかなカスタマイズ機能が隠されています。
片耳だけを調整できる機能
Pixelの音声増幅機能の中には、「左右の耳を個別に調整する」という設定があります。
片方の耳はそのままに、聞き取りにくい耳だけのサポートを強くするといった、自分の耳のバランスに合わせた設定が画面上のスライダーで簡単にできるのです。
私の場合は、右耳の低音部分が聞き取りにくかったために、右耳の低音を上げるということもできました。
これは、30万円の補聴器の完全な代わりとまではいかなくても、補聴器のように自分に合った聞こえやすさを助けるには十分すぎるほど賢い機能です。
そして、愛用している骨伝導イヤホンをBluetoothでPixelにつなぐことで、耳に圧迫感のない状態でハッキリと聞こえるようになったのです。
単に音を大きくするのではなく、私の「右耳の低音が聞こえにくい」という弱点に合わせて、スマホのAIが音を丁寧に整えてくれたということです。
私にとっては、耳を塞がない骨伝導の心地よさをそのままに、自分だけのデジタルな杖を手に入れた瞬間と言えるかもしれません。
文字起こし機能
Pixelには耳の不自由な人に対して、もう一つ便利な機能があります。
音声文字起こし機能というのがあって、YouTubeの動画や、スマホから流れるあらゆる音声に自動で字幕を付けてくれるのです。
さらに、音声文字変換(Live Transcribe)を使えば、目の前で話している人の言葉を、まるで映画のの字幕のように、リアルタイムで画面に文字として表示してくれます。
この機能を使えば、病院の窓口やアクリル板越しで声が聞き取りにくい場所でも、会話を目で確かめることができるという優れものです。
デジタルはシニアの支え
年齢とともに増える不便さは仕方ないと諦めてはいませんか。
確かに、老化現象における体や機能の衰えはどうしようもないことかもしれないのですが、決して諦める必要はありません。
現代は、いろいろな技術が開発されて、私たちの不自由さを補ってくれています。
耳が遠くなって何度も聞き返したり、聞き取ろうと神経をすり減らしたりすることがなくなると、心にホッと息をつけるゆとりが生まれます。
そのゆとりのおかげで、心に安らぎが生まれるのです。
年齢を重ねるごとに増えるちょっとした不便も、デジタルの力を上手に借りれば軽やかに乗り越えていくことができることになります。
デジタルは冷たいものではなく、シニアの生活をサポートしてくれる優しい「杖」なのです。
新しい技術を味方につけて、心に心地よい余白を持った豊かな毎日を楽しむことで、シニアの暮らしはもっと自由になるはずです。