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「モフ子と自分勝手なイノシシ」

モフ子は、毎日の時間をゆっくり大切にすごしています。

森の中に咲く花のにおいを嗅いだり、森の動物たちと仲良く会話したり、つねに感謝の気持ちを忘れないようにして、笑顔をたやさないような暮らしをしています。


そんなモフ子とは対照的に、森にはみんなに迷惑をかける暴れん坊のイノシシがいました。

自分勝手で、自分が欲しいとなると、なんでも手当たりしだいにむさぼります。

そして、自分が気にくわないことがあると、だれかれかまわず、どなったりあばれたりするやっかいものです。

そのような暴れん坊のイノシシに対して、まわりの動物たちは、だんだん離れていってしまいました。


暴れん坊のイノシシが、いつものように森の中をわがもの顔で歩いているところに、モフ子と遭遇します。

森の動物たちは、遠くで見守ります。

「どけ、ここはおれさまの通り道だぞ」


「イノシシさんはいつもどうして、そんなにこわい顔をして怒っているの?」

モフ子は、やさしくイノシシに声をかけます。

「うるさい。お前の知ったことか」

「怒らないで、私とお話ししましょ」


モフ子はイノシシを落ち着かせると、やさしく言いました。

「食べ物をあさって独り占めにしたり、道をふさいでわがもの顔で歩いたり、自分が気に食わないとうるさいと、すぐに怒鳴るのは良くないわ」

モフ子の言葉に、威勢の良かったイノシシは、おとなしくなりました。


モフ子は、イノシシの隣にすわると話し始めたのです。

「たとえばね、いつもいつも怒って自分勝手な行動をしたら、みんなはどう思うかしら?」

「おれ、わるいことなんかしてないぞ!」

イノシシはむっとしました。

「わるいつもりじゃなくても、いつも自分のことばかりだと、まわりは嫌な気もちになるのよ」


イノシシは、くびをかしげました。

「そんなことで、きらわれるのか……?」

「イノシシさんは、やさしい気もちを忘れてるだけかもしれないよ。こころってね、しずかに見つめると、いろんなことが見えてくるの」

「こころ?」

「そう。いまのじぶんの気持ちに気づいて、これではいけないと心で思うとね、相手の気持ちも、わかるようになってくるわ」


「それって、どういうことだ」

「自分の思い通りにしようとか、言うことを聞かないと怒ったり、自分の心のおもむくまま勝手なことをしようとするの。でもそのようなことをみんなが行えば、世の中はめちゃくちゃになるわ」

イノシシは首を傾げました。

「世の中は、みんなが相手を思いやる気持ちで生きることで、みんなが幸せになるのよ」

「へぇー」

「イノシシさんも、そのような生き方をしてみてごらんなさい。きっと世の中が違って見えるから」


モフ子の言葉にイノシシは、何か気がついたのか、「よしやってみる」と言いました。

「俺も、みんなが寄り付かないようになって、たしかに、さびしかったんだ」

モフ子はうなずきました。

「大丈夫。そのことに気づけたら、それだけで変われるわよ」


イノシシは、その日から少しずつ行動をかえてみることにしました。

木の実を見つけても、今までのように独り占めにするのではなく、また誰か来るかもしれないので残しておこうと思うようになりました。

そのようなイノシシを見て、森の動物たちもイノシシを遠ざけるのではなく、近寄って挨拶をするようになったのです。

リスがあいさつしてきたとき、「うるさい!」と言いかけて、あわてて「……おう」とだけ照れ臭そうに言いました。

このようにすごしてみると、ふしぎなことにまわりのけしきが、あかるく見えてきたのです。


やがて、イノシシの心にも変化が起こりました。

花の色がきれいなことや、風がやさしく、鳥のうたごえが心にしみるようになったのです。

自分が変わることで、こんなに世界が変わって見えるということにイノシシは気がついたのです。


星空の森で、モフ子とイノシシはいっしょにすわって、夜空を見上げます。

イノシシの顔はおだやかでした。

「なんだか、すこし楽になったよ」

イノシシがつぶやく言葉に、モフ子は言いました。

「不平不満を言うことや、自分さえ良ければいいという考えを捨てることで、世の中は輝いて見えるのよ」

わたしたちの心の中にも、ときどきイノシシのような気持ちがあらわれます。

すぐ怒ったり、なんでもほしくなったり、理由もわからずイライラしたり……。

でも、そんなときこそ「どうしてだろう?」と、自分の心をそっと見つめてみることにしましょう。

モフ子のように、やさしく、しずかに心に寄り添えば、世界は少しずつ変わって見えてくるはずです。