
モフ子はお母さんから頼まれて雨の中、買い物に出かけます。
しかし、雨はだんだんと強く降ってきて、雷も鳴り始めました。

「こわいよ…」
モフ子は大きな木の下に入り、雨宿りをすることにしました。

モフ子が雨宿りをしていると、小さな影が近づいてきました。
それは母ザルとはぐれた子ザルで、雨にぬれて震えていました。
「どうしたの?」
自分が怖いのを忘れて、モフ子は子ザルにやさしく声を掛けます。
子ザルは泣きながら、「お母さんとはぐれたの」と言います。

怖くて寂しいのはモフ子も同じなのに、子ザルをやさしく抱きしめて「きっとお母さんに会えるから」と励ますのでした。

そこに、母ザルが駆け寄ってきました。
子ザルは「おかあさん!」と飛びつきます。
母と子の再会を見て、モフ子の胸に光がひろがりました。
「よかった」
モフ子は、自分のように喜びました。

雨の中で母ザルと子ザルの再会を見届けたあと、一人になったモフ子は、遠くから「モフ子~」という声を耳にして顔を上げます。
目を輝かせて声のする方を見つめ、モフ子は力いっぱい「おかあさん」と叫びました。

雨がやんだ夜。
モフ子は家の窓辺に座り、星や月を見上げていました。
「みんなだれかに愛されて育っている。わたしのことも、心配してくれる人がいる」
そう思うと胸が熱くなってきました。
愛されるぬくもりは、ちゃんと自分の中にもあるということを、モフ子はそれをはっきり感じたのです。

モフ子がもの思いにひたっていると、夜を切り裂くように、森じゅうにサイレンの音がひびきました。
さっきの落雷で、森に火の手が上がったようです。
赤い炎が木々をのみこみ、黒い煙が立ちのぼります。
小さな動物たちは、森の中をあちこちと逃げまどいます。

「みんな、森を守ろう」
モフ子はありったけの声で叫びました。

リスやサルは小さなバケツで川から水をくみます。
シカは長い足で素早く次の仲間にバケツを運びます。

イノシシとクマは、森の道をふさいでいる倒木を押しのけて、消防車が入れるようにしました。

森はみんなの協力と消防活動が功を奏して、大事には至らずに守られました。
それは、自分のためだけでなく、大切な仲間のためにみんなが協力して行動するということでした。
愛するものを思う気持ちが、森をひとつにしたのです。
モフ子は胸の奥があたたかくなるのを感じました。
「助け合う気持ちがあるかぎり、森はきっと守られていくんだ」
そして、こうして思いやる仲間がいることを、とてもうれしく思うのでした。