
人間が道具を使うようになったのは、便利さを求めることから始まりました。
重いものを運ぶために車輪が生まれ、
暗い夜を照らすために灯りが生まれ、
手間を省くために家電が生まれました。
やがて、情報をすばやく得るためにパソコンやスマートフォンが登場し、自分で考える機械であるAIへと進化してきたのです。
そして今、AIはさらに一歩先へ進化を遂げていきます。
それは、人が命令しなくても、自ら判断して動くAIエージェントという存在が現れはじめています。
今回は、この「便利さの進化」の流れを振り返りながら、これからの暮らしがどう変わるのか、そして、人間らしく生きる幸せがどう実現していくのかを一緒に考えてみることにします。
目次
便利さは、いつも人間の味方だった
昔は毎日、井戸から水をくみ、かまどに火をつけてごはんを炊いていました。
それが、今では蛇口をひねれば水が出て、ボタンひとつで炊飯器がごはんを炊いてくれます。
手間が減ることで、家族との会話が増えたり、自分の趣味に時間を使えたりすることができるようになりました。
つまり便利さは、人間の心の豊かさや自分らしい時間を生み出してきたのです。
今までの便利さとは
過酷な労働や危険な作業に人間が従事するのは、リスクが生じることや体力的にも限界があります。
そこで、人間に代わって機械が行うようになってきたというのが進化の流れです。
これまでの便利な道具や機械には、ひとつの特徴がありました。
それは、人が命令しないと動かないということです。
洗濯機もボタンを押さなければ回らないし、扇風機においては暑ければスイッチを押して風を送るということで、団扇しかなかった頃に比べると便利になったのです。
つまり、使う人がいつも考えて操作することで、機械が動いていたということです。
デジタル社会の到来
次の進化は、人間がいちいちスイッチを入れなくても、あらゆる機能が自動で動くようになってきました。
これは、プログラムといって、ある一定の動作をすることを機械に覚えさせておくと、状況に応じて動いたり止まったりします。
工場のオートメーション化も、人間が行う動作をプログラムに記憶させて機械を動かすというデジタル社会の到来です。
しかし、そこにはひとつの限界があります。
それは、あらかじめ決められたことしかできないということです。
つまり、プログラムはあらかじめ指示した通りに機械を動かすということで、状況を見て自分で判断することはできなかったのです。
AIという人工知能の出現
AI(エーアイ)とは、「Artificial Intelligence」の略で、日本語では人工知能と呼ばれます。
人間のように考える力を持った、人工的に作られた頭脳のことです。
AIの基本的な働きとは
AIには、次のようなことができます。
- 会話や文章を理解して、答える(例:ChatGPT)
- 写真や映像を見て、物や人を認識する(例:防犯カメラ)
- データを分析して、将来を予測する(例:天気予報や株価の予測)
- 人の声を聞き取って、指示に応える(例:スマートスピーカー)
どれも、人間の考えるということや判断するということに近いことを、機械が再現しているという点が特徴です。
AIはどうして賢いのか
ChatGPTのようなAIは、世界中の本や会話、ニュース記事など、膨大な文章データを学習しています。
その学習の中から、こういう質問には、このような答えが返されることが多いというパターンを覚え、質問に対して自然な答えを選んで返してくれます。
つまり、AIは学習したデータの中から、最適な答えを探すことができるということです。
質問に対して、A Iは状況に応じて学習したデーターの中から判断するということができるようになったのです。
AIは受け身の存在
ここで忘れてはならないのが、AIはあくまでも人が指示を出したときに答えを見つけてくれる存在だということです。
重要なポイントとして、A Iがどれだけ賢くなっても、 人間が指示を出したことでしか動かないということです。
- 「この文章を要約して」
- 「おすすめのレシピを教えて」
- 「予定を整理して」
このように指示をしたことには的確に答えてくれますが、自分から何かを提案したり、先回りして動くことはできないのです。
AIエージェントという進化
AIの限界を超えて、AIのほうから動き出したらどうなるかといった新しい発想から生まれたのが AIエージェント です。
AIエージェントは、考えて、判断して、行動してくれるという、従来のAIの受け身だったものから新たな行動というタスクをするようになったのです。
つまり、これまでのAIが人に言われたことに答えるだけだったのに対して、AIエージェントは状況を自分で判断し、必要な行動を提案または実行することができるのです。
たとえば、こんな場面では、
● AI(従来型)の場合
「今日の予定を教えて」と聞くと、予定を読み上げてくれます。
● AIエージェントの場合
あなたが何も言わなくても、「今日は気温が下がるので、上着を忘れずに。午後から病院の予定もあります」と先回りして伝えてくれます。
AIエージェントの特徴は自発性にある
AIエージェントの最大の特徴は、自発的に動くという点です。
あなたが指示をしなくても、A Iが目的に合わせて動いてくれることにあります。
忘れていた用事を、先に気づいて教えてくれたり、何かに困っていそうなときに、先回りして助け船を出してくれるのです。
技術的には何が違うのか
簡単に言えば、AIエージェントには以下のような機能が組み合わさっています:
機能 | 説明 |
---|---|
役割を理解する | 状況を理解して、時間・天気・スケジュール・体調などを把握して教える |
判断力 | 複数の情報をもとに、今、必要なことを考える |
行動力 | 提案したり、自動でアプリを操作するなどの実行に移す |
これにより、AIエージェントは人間の生活全体を見渡しながら、支えることができるA Iに進化したのです。
実際に始まっている活用例
すでに、一部のテクノロジー企業ではAIエージェントにおける開発が始まっています。
Microsoftの「Copilot+PC」では、パソコン全体をAIがサポートとして、適切な環境のもとに使うことができます。
スマートホームでは、その時の気温や状況を判断して、室内の照明、エアコン、カーテンなどをAIエージェントが自動で操作します。
高齢者支援ロボットでは、会話や体調管理、服薬サポートまで対応可能になります。
つまり、AIエージェントの時代は、もう「未来の話」ではなく、静かに始まりつつある現実なのです。
AIエージェントとは、従来の考えて答えるだけではなく、考えて動く存在として自ら判断し、暮らしを支えてくれる暮らしのパートナーとして、私たちの毎日に寄り添う未来のA Iということになります。
AIエージェントは、便利のその先にあるやさしさ
AIエージェントは、便利さを超えた存在になりつつあります。
単に命令通りに動く機械ではなく、あなたの暮らしや状況を理解し、必要なときにそっと寄り添ってくれる執事のような、頼れるけれど出しゃばらない存在とも言えるかもしれません。
便利さの進化は、作業を減らし、時間や体力の負担を軽くしてきました。
そしてAIエージェントの登場によって、日々の雑事や判断の負担さえも肩代わりしてくれるようになってきます。
しかし、それが人間を幸せにするかどうかは悩むところです。
考える力や主体性が失われていくのではという懸念もあります。
だからこそ、言えるのは、AIは人間の代わりではなく、補い手であるべきだということです。
私たちが持っている「考える力」「感じる心」「選ぶ意志」を失わないように、その下支えとしてAIがそっと背中を押してくれる存在であればいいというのが結論です。
人間が道具を使うようになったのは、ただ楽をするためではなく、よりよく生きたいという願いがあったからこそ、A Iの進化に結びついてきました。
これからは、A Iの進化は止めることができなくなるかもしれませんが、そこで、人間がどのように関わり、どのように生きるかということが選択肢のひとつになってくるのだと考えます。
これからますます進化してくる未来社会を、ただ漠然として生きていくわけにはいかない時代になってきています。
シニアにとって、AIをどのように受け入れるかはあなたの考え方次第です。