「いざ絵本を作ろう!」と思い立ったとき、立派なメッセージやテーマを最初から用意しなければならないかというと、実は決してそんなことはありません。
世の中には、教訓のような深いテーマがなくても読者を夢中にさせる素晴らしい絵本がたくさん存在します。
「不思議な世界を描きたい」「かわいいキャラクターを動かしてみたい」という純粋なワクワク感だけで、十分に魅力的な作品は作れるのです。
なぜ、私の絵本には「テーマ」が必要なのか
テーマがなくても絵本は成立します。
しかし、私がブログで発表している『モフ子と森の仲間たち』の物語には、一作ごとに必ず「テーマ」を持たせるようにしています。
特に「大人が読む絵本」としてお届けしたいと考えたとき、ページを閉じた後、読者の方の心に何かしらの「気づき」や「温もり」がじんわりと残るような作品にしたいからです。
私にとっての絵本は、作者としてのメッセージそのものとして書いています。
「この絵本を通して、どんな思いを届けたいか」という明確な目的から、私の絵本作りはスタートします。
「出来事」と「テーマ」は違うもの
物語を作るとき、つい混同してしまいがちなのが「出来事」と「テーマ」の関係です。
出来事は物語の筋であって、こうした出来事の奥底に、「友情は何よりも尊い」「みんなで力を合わせれば乗り越えられる」といった「テーマ(作者の思い)」をしっかりと書いておくことが大事なことです。
根底にこの見えない思いがあるからこそ、絵本は骨太でしっかりとした作品になるのです。
テーマは、物語が迷子にならないための「軸」
テーマを最初に決めておくと、不思議なことに、登場人物の性格やストーリーの展開がとてもスムーズに決まっていきます。
逆にテーマが曖昧なまま書き出してしまうと、「あれも言いたい」「こんな展開も入れたい」と話がどんどん横道に逸れ、最終的に「結局、何が言いたい絵本なの?」と物語がわからなくなってしまうのです。
最初に決めておいた「届けたい思い」があると、物語を最後まで真っ直ぐに展開して行きます。
日常の「ひらめき」が物語に結実するまで
私が絵本のテーマを見つけるのは、ごくありふれた日常のワンシーンからです。
のんびりと散歩をしているとき。 テレビのニュースを眺めているとき。 ふと窓の外の景色に目をやったとき。
そんな何気ない瞬間に、「あっ、これを絵本にしたいな」という思いがふっと降りてきます。
でも、そのひらめきは、決してゼロから突然湧いてきたわけではありません。
自分の中にずっとあった考えや、75年の人生で積み重ねてきた数々の経験が心の奥底で発酵し、日常のちょっとした出来事と結びついた瞬間に、「ひとつの確かな思い」として形を成すのです。
テーマがあるから、モフ子は生き生きと動き出す
「これを届けたい」という確かなテーマが見つかったら、あとはそれに沿って、物語にどんな「出来事」を起こせばいいかを考えていきます。
主人公にどんな試練を与えようか。
それをどう乗り越えさせようか。
その過程で、主人公の心はどう成長していくのか。
読者は、ハラハラしながら物語の「出来事」を追いかけていくうちに、自然とその奥にある「テーマ」を受け取ってくれむけにになります。
「誰に、何を届けたいか」 この確かな思いをぎゅっと握りしめているからこそ、主人公のモフ子は物語の中で迷うことなく、今日も生き生きと森を駆け回ってくれるのです。