
最近、「体に良い水」という言葉をよく見かけるようになりました。
水素水やアルカリイオン水など、健康を意識した商品も増えています。
中には貝殻などの成分を通して有害物質を濾過する浄水器もあるようですが、これらは大手メーカーでも製造販売されています。
私自身もジムでそうした水を見かけ、運動の後に飲むことがあります。
普通の水道水よりも、なんだか体に良さそうと思えてしまうからです。
「病気が治る」という真っ赤な嘘
ここで誤解のないよう最初にお伝えしておきたいのは、浄水器や健康を意識した水そのものが「悪」だと言いたいわけではありません。
水の不純物を取り除き、きれいにして美味しく飲むための道具として使う分には何の問題もないからです。
しかし、大きな問題は、浄水器で生成した水に「医学的な特別な効能」があるかのように言い切ってしまう販売手法にあります。
「これを飲めばアトピーが治る」 「ガンにも効果がある」 「アンチエイジングになり若返る」といったように、科学的に立証されていないことを真実のように語り、商品の価値を不当に大きく見せて、高額な浄水器を売りつける行為は断じて許されません。
特に悪質なのが、会場に人を集めて熱狂的な雰囲気の中で売りつける「SF商法(催眠商法)」です。
SF商法については、別の記事で詳しく解説していますので、そちらを参考にしてください。
催眠商法のこの手口では、磁気治療器などと一緒に高額な浄水器が売られていることがよくあります。
閉め切った会場の熱狂的な雰囲気の中で巧みに言葉を操り、事実とは異なる過剰な効能をでっち上げることで、「この魔法の水さえあれば健康になれる」と消費者を完全に錯覚させるのです。
そもそも、ただの生成された水に医療効果があるように偽って販売することは、法律で固く禁じられています。
それにもかかわらず、業者は言葉巧みに事実とは異なる過剰な効能をでっち上げて、もっともらしい効果を説明して浄水器を高額で売りつけるのです。
エスカレートするインチキ「波動水」
この水ビジネスの恐ろしいところは、「水素」や「シリカ」といったいかにも科学的で耳障りの良い言葉から入り、気づかないうちに信じられないようなインチキ商法へとエスカレートさせていく点です。
過去に社会問題にもなった「波動水」を覚えている方もいらっしゃるかもしれませんが、「水に特別なエネルギー(波動)が入っているので、水に話しかけて波動を送った水を飲むだけで病気が治る」などといった効能を謳ってお金を集めた詐欺がありました。
さらに、普通の水と浄水器の水で「切り花の日持ちが違う」といった過剰な比較写真を見せつけ、あたかも魔法のような力があるかのように錯覚させます。
「この水を毎日飲んでいれば病気が治る」と言って売る行為は、法律(薬機法や景品表示法)でも厳しく禁じられているのですが、それにもかかわらず、手を変え品を変え、今でも高額な浄水器が売られ続けているのです。
霊感商法とまったく同じ構図
昔から「鰯の頭も信心から」と言いますが、騙されている本人は「これを飲めば治る」と本気で信じ込んでいることが少なくありません。
実際、「体に良い魔法の水だ」と信じて飲むことで、思い込みによって一時的に気分が良くなることもあります。
それがさらに「この水のおかげだ」という盲信を生んでしまうのです。
「これを飲み続けないと病気が悪化する」という見えない恐怖で人を縛り付けるやり方は、「この壺を買わないと不幸になる」と脅す霊感商法とまったく同じ構図です。
周りの家族が「それはただの水だ」と心配して忠告しても、「私を救ってくれる水を否定するなんて」と意地になり、かえって孤立してしまいます。
家族の絆すら断ち切ってしまったり、ますます病気が悪化してしまうという、この商法がとても悪質であるというところでもあるのです。
なぜ人は信じ込んでしまうのか
人は弱いから騙されるのではありません。
「健康でいたい」「将来、家族や子供に迷惑をかけたくない」といった、まっすぐで優しい気持ちがあるからです。
体に不安を感じたとき、少しでも楽になりたい、薬などに頼らず健康でいたいと思うことは自然なことです。
悪徳業者はまさにその気持ちに目をつけ、「病気が治る」と信じ込ませるのです。
「これを飲めばガンが治る」「アトピーが良くなる」といった医学的根拠のない明らかな嘘は、シニア世代の「家族に迷惑をかけずに健康でいたい」という切実な願いに、ピタリとはまってしまうからです。
本来なら普通の価格で買えるただの浄水器に、病気を治す魔法の水を作る機械と言って、消費者の目を欺き、不当な価格を騙し取ることこそが、この商法の最も許しがたい問題です。
業者はさらに「今すぐ始めないと手遅れになる」と不安を煽って、家族に相談する隙を与えずに、シニアに対して高額な浄水器の購入や長期のメンテナンス契約を結ばせるのです。
迷ったら立ち止まる
最後にもう一度、はっきりとお伝えしておきますが、 悪徳業者が言うような「病気が治る魔法の水」など、この世には存在しません。
こうした明らかな嘘を用いた悪質な販売方法や過剰な謳い文句は、結果として国民生活センターからも厳しく注意喚起を受ける事態となっています。
本来、私たちの健康は、日々の食事や適度な運動、そして規則正しい生活習慣といった「毎日の積み重ね」で作られるものです。
たった一つの特別な水だけで、一瞬にしてすべてが解決するようなことなどありえません。
もし、「この水で病気が治る」「絶対に健康になる」という言葉で高額な商品を勧められ、少しでも心が揺れたり、迷ったりしたときは、絶対にその場で一人で決めないことです。
業者は「今日だけ」「あなただけ」と買うことを急がしてきますが、勇気を出して一度立ち止まって考えてください。
もし、騙されているのではないかと気がついても断れない時は、お住まいの地域の消費生活センター(局番なしの「188番」)に相談しましょう。

誰かに話せ聞いてもらうことで、冷静な判断力を取り戻すことができるからです。
「家族に迷惑をかけず、健康でいたい」 そんなまっすぐで優しい願いが、悪徳業者の金儲けの道具にされないことを切に願っています。

