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「よくばりなサルが手放すことで知った喜び」

わたしたちは、ついなんでも「もっと、もっと」と思ってしまいます。
ものでも、時間でも、気持ちでも、手の中にたくさん入れようとすればするほど、心はだんだんと苦しくなってきます。

でも、手ばなすことでしか見えないやさしさがあり、得るものがあるのです。

森にすむモフ子とサルの小さなお話は、ほしいと思う気持ちの奥にある、手放すことの大事さを教えてくれます。

森の木の下で、サルがリンゴを見つけました。

「やった! ぼくのリンゴだ!」

サルは、大よろこびしました。


右手にひとつ、左手にひとつ。

サルは、リンゴをぎゅっと握りしめ、ニヤリと笑いました。

「だれにも渡さないぞ」

しかし、よく見ると、木にはもうひとつリンゴがなっています。


「よしあれも取ろう」

サルが欲ばって木になっているリンゴを取ろうとしたしゅんかん、左手に持っていたリンゴが落ちかけました。

サルは、あわててリンゴを抱え込むのですが、そうなると木になっているリンゴを取ることができません。


サルは背伸びしたり、飛び上がったりと何度も挑戦するのですが、リンゴを取ることはできません。

「くそっ、だめだ!」


そのとき―― バサッと、 黒い影がサルの前を横切りました。

カラスです。

カラスは、木になっているリンゴをくわえると飛び去っていってしまったのです。

「あっ!! ぼくのリンゴがぁ!」


サルは大あわてでカラスを追いかけようとしましたが、足をすべらせて転びそうになりました。

その時に、手に持っていたリンゴが転がり落ちて、二つとも草むらの向こうへ消えていってしまったのです。


サルは、がっかりしてうなだれると、疲れたように道端に座りこんでしまいました。

「せっかくの僕のリンゴだったのに」

そこへモフ子がやってくると、サルの隣に座りました。


肩を落としているサルは、

「僕が欲をかくから、反対に何もかも失ってしまった」

サルは、モフ子に向かってぽつりとつぶやきました。


「欲張ると心が落ち着かないし、いいことなんてないんだ」

サルは小さく息をはきました。


「欲張って何もかも手放さないでいると、手も心もぎゅうぎゅうになって、心がすたれてくるの」

モフ子の言葉に、サルは大きく頷きました。

「それよりも、今あるものを手ばなすことのほうが、心がスーッと楽になるわ」


その時、草むらの向こうから、リスが落ちていたリンゴを持って、サルとモフ子のところにやって来ます。

「これ、落ちていたのだけれど、もらっていいの?」

サルはにっこり笑うと、やさしくうなずきました。


「ありがとう」

リスは幸せそうに、サルに何度も礼を言いました。


サルはうれしそうに、

「なんでも欲張ってひとりじめするより、だれかと分けあったほうが、なんだか幸せな気分になるんだね」

サルの言葉に、モフ子は大きく頷きました。


あとがき

サルが気づいたように、人はたくさんのものを持とうとします。
さらに、もっともっとと思うことで、だんだん心が苦しくなってきます。

両手に持ったリンゴだけでは満足できずに、握り続けていると新たなものが手に入ることはできません。

何ごとも、新しいものを手に入れたいなら、握りしめずに手放すことが大事なことなのです。

欲望は心を窮屈にし、何かを手放すことで人は自由になるのです。


この物語は、YouTubeのショート動画で流しています。