森にフクロウのおばあさんが住んでいます。
そのおばあさんの口癖は、何かあったら「だいじょうぶ、だいじょうぶ」と呟くことです。
「失敗したらどうしよう」と不安になるとき、その言葉を口にするだけで心が軽くなるのです。
その言葉がどんな力を持つのか——。
これは、言葉の力強さを描いた物語です。

森の奥にフクロウのおばあさんが住んでいました。
いつもやさしい言葉で「だいじょうぶ、だいじょうぶ」が口癖です。
モフ子は、その言葉をいつも近くで聞いていました。
動物たちも、その言葉を聞くと、不思議と心が落ち着いてくるのです。

ある日、リスが大切などんぐりを落としてしまいました。
「せっかく集めたのに…」と涙ぐみます。
そこへフクロウのおばあさんがやってきて、にっこりとしてから言いました。
「だいじょうぶ、だいじょうぶ。もう一度拾えばいいのよ」
その言葉にリスは、胸のつかえがすっとほどけると、「仕方ないか」と気持ちを切り替え、また元気に木の実を集めはじめました。

ネズミは高い壁を前にして躊躇しています。
「ぼくには無理だ…」
ネズミは、この壁を上ろうとしているのですが、もし失敗して落ちたらどうしようと胸が高鳴ります。
近くにいたフクロウのおばあさんが言いました。
「だいじょうぶ、だいじょうぶ。挑戦することがすごいんだ」

その声に、ネズミはやってみるだけやってみようと思いました。
勇気がわき、壁に手足をかけて一歩を踏み出すことができたのです。

その夜、モフ子は布団の中で目を閉じました。
「明日はテスト…もし良い点数が取れなければどうしよう」
と、心配で眠れません。
そのような時に、フクロウのおばあさんの声を思い出しました。

「だいじょうぶ、だいじょうぶ。あとは、最善をつくすだけ」
その言葉を自分でつぶやくと、不安はゆっくりとかすんで消えていきました。
まるで魔法のように、心がやさしく静まっていったのです。
そして、やさしい気持ちで眠りにつくことができました。

フクロウのおばあさんの「だいじょうぶ、だいじょうぶ」は、ただの慰めの言葉ではありません。
心を落ち着かせ、勇気をくれる、不思議な力のある言葉でした。
モフ子は思いました。
「だいじょうぶ、だいじょうぶ」は、そっと背中を押してくれるものであり、そして、こだわりを捨てさせる魔法の言葉でもあるのです。

それから森では、だれかが失敗しても、みんなで声をかけあいました。
「だいじょうぶ、だいじょうぶ」
その言葉は、森じゅうにやさしい思いやりの言葉として広がります。
あとがき
人はだれでも、失敗や不安に出会います。
そのとき「だいじょうぶ、だいじょうぶ」と声に出すと、
心が落ち着き、勇気がわいてきます。
「だいじょうぶ」という言葉は、ただ気休めではありません。
落ちこんだ心を立ち直らせ、眠れない夜の不安を和らげます。
また、失敗へのこだわりを手放し、自分を肯定する気持ちを育てることができるのです。
あなたも困ったとき、そっと「だいじょうぶ、だいじょうぶ」とつぶやいてみてください。
その言葉は、きっとあなたの心をやさしく支えてくれることでしょう。