
モフ子は、どんなときでもやさしい気持ちを大切にする森のウサギです。
雨がザーザーとふってきても、つよい風が森をふきぬけても、夏の暑い日でも、いつも元気に森を走り回っています。

森を歩いていると、けがをしたリスを見つけました。
モフ子はやさしく手をのばし、バックから包帯を取り出し、「だいじょうぶ、痛くない?」と声をかけました。
リスは安心して、しっぽをふるわせました。

「クマさん、どうしたの」
「みんな、ぼくのこと怖がって、一緒に遊んでくれないんだ」
大きなクマさんは、ひとり寂しくしていました。
モフ子はそっととなりに座り、「私はあなたの友達よ」と、ささやきました。

「じぶんだけが楽しければいいんじゃない。みんなが仲良く笑っている森が、いちばん幸せなんだ」

ある日、森に大雨が降りました。
森に流れる川が氾濫しそうになります。
そこで、モフ子は川の水をせき止めるように大きな石を積み上げます。

クマがやってきて、大きな木をたおして、川の氾濫を防ぎます。
リスや小鳥もいっしょに枝をはこびます。
「みんなで力を合わせれば、どんなことも乗り越えられるよ」
モフ子は笑顔で仲間をはげましました。

疲れたように旅人が、切り株で休んでいました。
モフ子は声を掛けます。
「どうしたのですか」
「おなかがすいて歩くことができないのです」
モフ子はすぐさま、森の中の果物を集めて旅人に差し出しました。
「困ったときはお互い様だから」モフ子のその言葉に、旅人は何度も頭を下げて感謝しました。

ある日、カラスと鳥がエサをめぐって、言い争いをしています。
「僕が先に見つけたんだ」、鳥が言います。
カラスは、「これは俺様のもんだ」と、一歩も引きません。
そこで、モフ子は実を二つに割って、「分け合えば、みんな幸せになれるよ」と、言い争いはやめるように説得しました。

けんかしていた鳥たちは、はずかしくなり、「ごめんね」と頭をさげました。
モフ子はただにっこり笑い、「またみんなでいっしょにあそぼうね」と声をかけました。
鳥たちは、心から反省して仲直りをしました。

森に雪が降り積もり、動物たちは静かに家の中に閉じこもっています。
雨は森をうるおしてくれて、風は森に新しい空気を運んでくれる。
夏の日ざしは森を育ててくれて、雪は静かに森を休ませてくれます。
季節の移ろいは、それぞれ役割があり、みんなで森を守っているのです。
モフ子は空を見あげて思いました。
「どんな季節も、どんな出来事も、森といのちを支える大切な出来事なんだ」

森は今日も笑顔でいっぱいです。
小さな動物たちがよりそい、木の葉がささやき、風がほほをなでていきます。
雨も、風も、雪も、みんな森の仲間。
やさしい心で思いやりを持って暮らすとき、森も生きものも、みんなあたたかい光につつまれます。