現代の日本では、老後に一人暮らしを選ぶ高齢者が増えています。
厚生労働省の統計によれば、65歳以上の高齢者が全人口の約30%を占める中で、一人暮らしの高齢者が年々増加し続けているということです。
この現象の背景には、いくつかの社会的要因があります。
まず、長寿化により配偶者との死別が増え、一人暮らしを余儀なくされる高齢者が多くなっているからです。
さらに、離婚の増加も高齢者の単身世帯を増やす要因となっています。
また、核家族化が進行することで、子供や家族との距離が広がり、高齢者が自ら一人暮らしを選択するケースが増えているのです。
このようなことから、日本では高齢者の一人暮らしが一般化しつつあります。
老後の一人暮らしには、自由や自立といったポジティブな面もありますが、一方で孤独や不安を感じることも少なくありません。
そこで、老後の一人暮らしを充実したものにするためには、どうすれば楽しく生きる事ができるかを考えてみることにしました。
目次
年金制度の普及
年金制度の発展により、高齢者が経済的に自立できるようになったことも一人暮らしを選ぶようになった理由の一つです。
高齢者が経済的に自立していることで、子供たちに依存する必要がなく自分の生活スタイルを自由に選べるようになった結果、高齢者が一人で生活することが可能になったのです。
かつて家長制度が存在した時代には、子供たちが隠居した親の面倒を見るのが一般的でした。
しかし、現在では核家族化が進行し、家族制度が大きく変化しています。
子供たちが独立し別々に暮らすことが増える一方で、高齢者も以前のように同居を望むことが少なくなってきました。
さらに、医療の進歩や健康の向上により、より長く自立した生活を送ることができる高齢者が増えてきたことから、高齢者も子供たちに頼ることなく、一人暮らしを選ぶことで自分のペースで生活できる利点を重視することが強まったのです。
子供たちと一緒に住む不自由さよりも、自分の生活スタイルを自由に選ぶことができるようになったのが、高齢者の一人暮らしが増える結果になっているといえます。
現代の高齢者の考え方
現代の高齢者は独立心が非常に強く、多くは「自分の生活は自分で決めたい」という意識を持っており、これが一人暮らしやアクティブシニアと呼ばれる生き方に繋がっています。
歳をとったからといって、社会からのサポートや家族の助けを必要とするということを当然と考えていません。
元気なうちは自分のことは自分で行うという考えを持っていて、自分の人生は自分で責任を持つという考えでいます。
また、生涯学習の精神が強く、シニア大学の講座への参加、新しい資格の取得など、知的好奇心を持ち続けていることが特徴です。
これは、情報化社会の中でのアクセスの容易さと、自らの時間を有意義に過ごす意欲に起因しているからと思われます。
このように、現代の高齢者は「受け身の老い」ではなく、「主体的な老い」を追求していて、それは、高齢者が自らの人生をより豊かに、そして自分らしく生きることの大切さを感じているからだと考えられます。
一人暮らしこそ幸せ
自分のやりたいことや興味のあることなどを行うアクティブシニアが増えてきて、自分がやりたいことに対しては意欲的に活動することから、高齢者であっても元気で活力に満ちています。
近年注目されるこの生き方の背景には、従来の高齢者の一人暮らしは可哀想という概念の再考があると言えます。
高齢者は家族とともに過ごすことが「幸せ」とされてきたのですが、高齢になっても自由で自分のことは自分で行うという人が多くなってくると一人の方が幸せという価値観に変わりました。
アクティブシニアという、新しい挑戦を恐れない人々は、一人の時間を「孤独」と捉えるのではなく、それを「自分と向き合う時間」と位置づけています。
一人の時間があるから、その時間を活用して新しい学びや経験を積むことで、充実したシニアライフを送ることができるのです。
実際、一人暮らしの高齢者の中には、旅行、スポーツ、アウトドア、ボランティア活動など、多彩な活動を楽しむ人が増えてきて、彼らにとって一人でいることは、誰にも束縛されない自由な時間と捉えて、自分が興味のあることに向き合えると喜んでいます。
このことは、新しい発見や自己成長のチャンスとみなしていて一人の時間を大切に楽しんでいるのです。
この動きは、社会全体での一人暮らしに対する認識の変化を示唆しているもので、一人暮らしは孤独という必ずしもネガティブなものではないという新たな価値観を持っています。
つまり、一人暮らしでも積極的に生きることで、孤独とどのように向き合ってどのように生きるかという価値を自分なりに考えて、高齢になっても一人で生きていくという老人が増えたのです。
新しい時代の家族の形
このようなことから、高齢者と家族のかかわりも変わってきて、高齢者が元気なうちは一人で自由にやってもらい、本当に必要になった時に手を差しのべるということが新しい時代の家族の形なってきたのです。
経済やテクノロジーの発展、そして社会の価値観の変化が家族の役割や関わり方に新しい可能性を生みだしてきました。
もっと進んでくると、老後は家族の世話にはならずに施設でクラスという選択肢も増えてきたのです。
都市化や核家族化の進行とともに、物理的な距離や日常の生活環境が変わる中で、家族という概念は変わってきています。
核家族化の進行は、一見、家族の絆の希薄化を意味するかのように思われるかもしれないのですが、それは家族の形が変わっただけで、家族という絆そのものが消えたわけではありません。
高齢者が一人暮らしを選択する背景には、自らの人生を自分のペースで生きるという自由があるからで、それは、家族から離れたくてそうしているわけではなく、ただ、自らのライフスタイルを尊重したいという願望からであって、高齢になっても自分らしく生きるという自己実現に関わってきているのです。
家族との絆
高齢者は守らなければならないということではなく、困ったときに手を差しのべる愛情が家族の絆であって、高齢者も自分のことは自分で行うという考えを持たなければならないということです。
家族とは、互いの自由や選択を尊重し合いながら、それぞれの立場や価値観を理解し合うことが、これからの家族の在り方かもしれません。
高齢の親と家族としての役割は、やさしさや思いやりが失われなければ、離れて暮らしていても良いのであって、子が親を思う心と親が子を思う心は不変なものであればそれでいいのです。
そして、何よりも高齢者は自立した生活を行うことで、一人暮らしという生き方で、老後の孤独を大いに楽しむ事が幸せの価値観なのです。
このことは、アメリカや北欧諸国の考え方に変わってきたのではないかと考えられます。
日本や中国、朝鮮などの家長制度の考えから、日本は変わりつつあると言えます。
高齢者が自律した生活を送る心構え
高齢者が心豊かな生活を送るためには、自分の生活を自分で管理して自律する気持ちが大切です。
この自律は、毎日同じ時間に起きて寝るといった規則正しい生活を送るということも大事なことで、バランスの良い食事をとることや、散歩など軽い運動を習慣にすることで、心身ともに活力を保つことを自分自身で積極的に行わなければなりません。
子供じゃないんだからと思うかもしれないのですが、めんどくさいと部屋が散らかったままであったり、お酒やタバコなどといった健康に悪い習慣を身につけて生活することは、一人暮らしにおいては健康を害する結果になってしまいます。
高齢者が健康で元気に生活するためには、健全な生活習慣を送ることが大事なことで、趣味や社会活動への参加などといった、積極的に社会に参加する生活をすることも必要です。
例えば、地域の趣味の会に参加したり、ボランティア活動や公園でのウォーキンググループに加わったり、自分が楽しめる活動を見つけることが生活に喜びと満足感をもたらします。
これらの生活習慣を身につけることは、一人暮らしの高齢者において、健康で社会とつながりを持つといった孤立しない生き方ができるからです。
このように、充実した生活を日常の生活に取り入れることで、一人暮らしでも心豊かな毎日を送ることができるのです。
自己を見つめる
一人暮らしの高齢者にとって、幸せな生き方というものは、生活ができればいいということだけではなく、自分自身の可能性を最大限に引き出し、個人の価値や夢を実現するプロセスを意味します。
高齢になっても人は学び成長し、新しい経験をすることで、生活に深い満足感と日々の生活に意味をもたらします。
高齢になって自分が自分らしくいつまでも生きるために、自分自身の興味や情熱を理解しそれらを追求することが重要です。
趣味を深めるために新しいスキルを学び、過去に挑戦できなかった活動に取り組むなどして、自分自身に投資する時間を作ることが大切です。
また、長年培った知識や経験から、困っている人を助けることは、自分の存在価値を感じ充実感を得る素晴らしい方法です。
一人暮らしの高齢者が年老いたからと家の中に引きこもるのではなく、自分が何をやるべきかということや、自分にとって何が大切かを見つめ直し、自分の価値を認識しそれに基づいて行動することが、一人暮らしの生活をより豊かで意味のあるものにすることになるのです。
老後の一人暮らしを楽しむためのポイント
老後の一人暮らしを楽しむためには、高齢者自身が日々の生活に充実感を持つ工夫が大切です。
以下の5つのポイントを意識することで、より豊かで前向きな生活を送ることができれば、老後を充実して生きる事ができるでしょう。
1. 趣味を見つけて深める
趣味は一人暮らしの大切な楽しみです。
手芸、絵画、ガーデニング、音楽、読書など、自分が心から楽しめるものを見つけて実践しましょう。
新しい趣味に挑戦することも、好奇心を刺激し、毎日をワクワクさせるきっかけになります。
2. 健康を大切にする
体力が衰えると、楽しみも減ってしまいます。
ウォーキングやヨガなど、無理なく続けられる運動を習慣にすることで、健康を維持し、日々の生活を楽しむ体力を確保することをしましょう。
食生活においても、バランスの良い食事を摂ることや十分な睡眠を心がけることをします。
3. 社会とのつながりを保つ
一人暮らしだからこそ、社会とのつながりが大切です。
地域のコミュニティやボランティア活動に参加することで、人との交流を保ち、孤独感を和らげることができます。
オンラインでの趣味のコミュニティに参加するのも良い方法です。
4. デジタル技術を活用する
インターネットやスマートフォンを活用して、情報収集や交流を楽しむことも大切です。
SNSやブログを通じて自分の考えや経験を発信することで、新しい仲間とつながることができ、そのことにより充実感を得る事ができます。
5. シンプルライフを楽しむ
老後はシンプルな生活を楽しむことで、束縛のない生活とと喪に経済的負担から逃れる事ができるからです。
自分にとって本当に大切なものを見つめ直し、心地よい空間を作ることがポイントです。
物に執着せず、必要なものだけで生活することで、心の負担が軽くなり、精神的な豊かさを感じることができるようになることは、心が軽くなり、シンプルな生活の中で感じる喜びや満足感が精神的な豊かさにつながってくるのです。
老後の一人暮らしを楽しむために、これらのポイントを取り入れることで、豊かで充実した生き方ができることになります。
一人暮らしの不安を解消するために
老後の一人暮らしは、自由であり全ては自己責任に関わってきます。
そこで、いつまでも誰かに迷惑をかけないで生きていくためには、いくつかの対策を取る必要があります。
緊急時の備えを整える
緊急連絡先をわかりやすい場所に置いたり、医療機関や地域のサポートサービスを把握しておくことで、万が一の時に速やかな行動が取れることで安心感が得られます。
また、緊急通報システムやスマートフォンの緊急機能を活用し、すぐに助けを呼べる手段を準備しておくことも効果的です。
住環境の見直し
転倒を防ぐために家をバリアフリーに改装したり、安全な家具の配置を考えたりすることで、日常生活でのリスクを減らせます。
適切な照明や防犯対策を導入することも、一人暮らしの不安を軽減する方法です。
このことについては、他に書いた記事がありますので参考にして下さい。
孤独感に対処する
誰とも話さなかったり、コミニュケーションがない老後はつまらないものです。
社会とのつながりを意識してこちらから積極的に人とのつながりを保つことが大切です。
地域のコミュニティに参加したり、趣味を通じて新しい人間関係を築いたりすることで孤独感を感じにくくなります。
また、家族や友人と定期的に連絡を取り合うことや、ビデオ通話などのデジタルツールを活用して顔を見ながら会話することで心理的な安心感が得ることができます。
一人暮らしを前向きに楽しむために
一人暮らしを前向きに楽しむことで、老後の生活はより充実し、楽しいものへと変わります。
趣味に没頭したり、社会とのつながりを大切にしたり、感謝の気持ちを日々の生活に取り入れることで、心豊かな毎日を過ごせるでしょう。
自分自身のペースで自由な生活を楽しむことができる老後の一人暮らしは、決して孤独や寂しさを感じるだけのものではなく、自立と自由を満喫できるチャンスです。
老後の一人暮らしを前向きな姿勢で臨むことは、人生の新しい楽しみと喜びに満ちた素晴らしい時間となることでしょう。