私たちの社会は急速に高齢化が進んでいます。
日本においては超高齢社会であって、高齢者の一人暮らしも数多く存在します。
人生の変遷と共に、家族や友人との距離が遠くなりがちになり、社会が自分を忘れ去ったかのように感じる瞬間があるかもしれません。
今回のこの記事では、老後における孤独の根本原因を探り、それによって引き起こされる心理的、社会的影響を明らかにすることにしました。
高齢者の孤独はけっして寂しいものではないのですが、社会から見放されて孤立してしまうと、誰からも相手にされなくなれば、生きる張り合いもなくなってしまいます。
そうならないように、老後を元気で楽しく生きるために、高齢者が孤立しない社会を作らなければなりません。
私たちは、高齢者一人ひとりが孤立しない、老後を幸せに暮らせる社会を目指すために、高齢者が直面する孤独の実態について、アメリカや海外ではどのような取り組みがなされているのかを探り、日本の高齢者を取り巻く環境について考えてみることにしました。
目次
高齢者の孤独とは何か
高齢者の孤独は、単に一人で生活しているということではなく、人とのつながりが減少して人とまじわらなくなった状態のことです。
人とのつながりが希薄になったりすることで、一日のうちで誰とも話さないという状況が生じることがあります。
孤独は人間関係の質の低下、配偶者や親しい友人の喪失、身体的な制約による活動の減少など、さまざまな要因によって引き起こされることがあります。
ここで重要なのは孤独と孤立の違いについてですが、孤立は人が周りにいたとしても理解されていない、誰にも相手にされていないという状況です。
一人暮らしで孤独が続くと社会から孤立した状況になり、うつ病のリスクを高まることが知られており、また、心臓病やアルツハイマー病などの身体的健康問題にも影響してきます。
このような状況にならないためにも、高齢者の孤独を解消するような手立てを考えないと、孤独は病気につながりかねない状態になってしまうからです。
そこで、高齢者の孤独は社会全体の問題であって、高齢者の孤独を見逃すと自殺者の増加や医療介護費の増加など、社会全体が破綻してしまう要因になりかねません。
アメリカの孤独における取り組み
アメリカにおける高齢者の孤独への取り組みは、多様な社会参加の機会の提供に焦点を当てています。
特に、教会やキリスト系宗教団体は、アメリカにおいて特に重要な役割を果たしており、高齢者に対して精神的な支援はもちろん、社会的な交流の場を提供しています。
これらの団体は、定期的な集まりやグループ活動、共同の食事会などを通じて、高齢者が他の人々と繋がり交流する機会を提供しています。
また、訪問サービスを通じて、身体的な理由で外出が困難な高齢者に対しても、コミュニティとのつながりを保つ支援を行っています。
外出できない高齢者にはビデオ通話などを利用することで、家族や友人とのコミュニケーションが容易になりました。
高齢者が地域社会に積極的に参加することを奨励する取り組みをとして、高齢者のボランティア活動、生涯学習プログラム、スポーツや芸術に関するクラスなど、高齢者の興味や能力に合わせた多様な活動が提供しているのです。
このような取り組みは、文化や地域の枠を超えた普遍的な理解と、地域社会全体の支援によって乗り越えることで、孤独が必ずしも不幸を意味するわけではなく、適切な支援とコミュニティの絆があれば、一人でいても豊かで満足のいく生活を送ることができるということになります。
高齢者が社会的に孤立することなく、豊かな意義ある社会生活を送れるように、アメリカでは高齢者の社会参加の環境を作り出しているのです。
世界から学ぶ、孤独に立ち向かう取り組み
世界各国で高齢者の孤独に対処するためのユニークな取り組みが展開されています。
これらの取り組みは、文化や社会の違いを超えて、孤独という普遍的な問題に立ち向かうための新たな視点を提供してくれます。
イギリスでは、「孤独担当大臣」を設置し、国家レベルで孤独問題に対処する取り組みが行われています。
これは、孤独が社会的、心理的、経済的に多大な影響を及ぼす問題であると認識し、政策や資源を集中的に配分することで、社会全体での対策を促進するものです。
このような政策的アプローチは、他の国々にとっても行われています。
オランダでは、スーパーなどの買い物の支払いが無人化が進む中で、「おしゃべりレジ」といった、対話や雑談をしても良い高齢者の孤独対策としてコミュニケーションを大事にする取り組みが行われています。
その他には、カフェや公共の場所で、席を共有して誰かと一緒に飲食を楽しむことを奨励していたりします。
このシンプルなアイデアは、日常の中で自然に社会的なつながりを生み出し、孤独感を減らすことを目指すことになります。
また、スウェーデンでは、「共同居住コレクティブハウス」が高齢者の間で人気を集めています。
これは、異なる世代が一つの住宅を共有し、日々の生活を通じて支え合う仕組みです。
この取り組みは、世代間の交流を促進し、高齢者が孤立せずに社会の一員として活動的に過ごせるようにすることを目的としています。
コレクティブハウスの記事に関しては、他に書いた記事があるのでそれを合わせて読んでみてください。
さらに、デンマークでは、「コミュニティキッチン」プロジェクトが展開されています。
高齢者のための子供キッチンの大人版で、一人で食事をする高齢者などが集って大勢で食事をするという取り組みです。
このプロジェクトでは、高齢者が地域のボランティアの若者と交流することができ、世代間の絆を深める活動にもなっています。
これら各国とも、高齢者の孤独ということが問題であるという認識で、高齢者の孤独に対する取り組みが、一方的な支援だけでなく相互の交流と理解に基づいたものであるべきという考えから行われています。
日本においても世界各国からのアイデアを取り入れ、文化や社会に合わせてアレンジすることで、より効果的に高齢者の孤独を軽減する新たな取り組みを見出すことが大事なことになります。
日本の孤独問題の取り組み
日本では、伝統的に家族制度が高齢者のケアを担ってきたのですが、家族制度が崩壊して、核家族化の進行や女性の社会進出、地方から都市への人口移動などにより、家族による高齢者の支援体制が確立されなくなり、高齢者が一人ぼっちになって置いて行かれたりします。
加えて、地域コミュニティの希薄化が進んで、地域による高齢者が交流する機会が減少してきました。
お祭りとか文化が残っているところでは高齢者と若者との交流があるのですが、過疎化が叫ばれるようになり、高齢者だけの地域社会になると、祭りや伝統芸能を維持するための若者との交流もなくなり、ますます高齢者は孤立していってしまうのです。
さらに、都会においては、人と関わらないというような傾向があり、近所付き合いにしても隣の人は何をする人かわからないという風潮があります。
そこで、地域の住民や自治体、NPOなどが協力し合い、高齢者が気軽に参加できる交流会やイベントを定期的に開催することで、人とのつながりを増やし、孤独感の軽減を図ることなどの取り組みを行われるようになりました。
また、地域内の高齢者を訪問し、日常の会話を楽しむボランティア活動も、孤立感を抱える高齢者にとって大きな支えとなります。
シニア世代の知識や経験を生かしたボランティア活動や、地域社会での役割を持つことは、社会とのつながりを感じる機会を増やすことができるからです。
さらに、世代間交流の促進も重要な要素で、学校や若者団体と連携し、高齢者と若者が共同で取り組むプロジェクトを企画するなど相互理解と尊重の精神を育むことでつながりを持つような催しが考えられています。
これらの取り組みを通じて、高齢者自身が社会から切り離された存在ではなく、大切なコミュニティの一員であると同時に必要とされているということを感じてもらうことで、高齢者の孤独の解消につなげていくことになるのです。
一人暮らしの高齢者と社会のつながり
社会とのつながりは、一人暮らしの高齢者にとって心豊かな生活を送るために大事なことです。
特に、地域コミュニティへの参加は、新たな友人を作り、情報を共有する機会を提供してくれて、いざという時に助けてくれる仲間の存在になります。
例えば、近所の集会所で行われる教室やクラブ活動に参加することで、同じ興味を持つ人々と繋がりを持つことができ、日々の小さな出来事を共有することで深い絆を育むことができます。
さらに、昨今のデジタル時代においてメールやLINEを利用したり、ビデオ通話アプリなどのツールを使えば、遠く離れた家族や友人とも顔を見ながら会話ができます。
オンラインの趣味の会やフォーラムに参加することで、世界中の人々と繋がり、新しい友情や学びの機会を得ることも可能です。
しかし、これらのツールを使いこなすためには、デジタルスキルの習得が必要となるため、地域の図書館やコミュニティセンターが提供する無料のコンピューター教室などを利用するのも良い方法です。
社会と繋がるためのこれらの方法と技術を活用することで、一人暮らしの高齢者も豊かで活動的な社会生活を送ることができるのです。
人との交流
世界各国で見られるように、日本でも社会支援やコミュニティセンターなどで高齢者が孤独にならないような取り組みをしているのですが、そこに参加して新たな友人を作るように努力する必要が高齢者自身にもあります。
高齢者の友達の作り方について書いた記事がありますので、それを合わせて読んでみてください。
また、デジタル機器の利用を支援することで、オンライン上での交流も促進されています。
日本においても、NPOやボランティア組織がシニア向けSNSの利用促進など、高齢者が社会と繋がりやすい環境作りが進められているのですが、高齢者自身も孤独を克服し充実した老後を送るためには自分から積極的な行動をしなければなりません。
園芸クラブ、書道クラス、料理教室、または社交ダンスサークルなど、同じ趣味を持つ人々との交流の場を楽しむことで、同じ興味を持つ人々との出会いが生まれ生活に新たな充実感をもたらしてくれます。
これらのサークルに参加したり、例えば、毎日の散歩中に近所の人に会えば挨拶をしたり、買い物などで顔見知りの人たちと話すことは、コミュニティとのつながりを強化する良い方法です。
このように、高齢者が趣味や社会生活に積極的に関わることで単調な毎日から抜け出し、活動的で充実した生活を送ることは、孤独を防ぐためにも重要で高齢者が孤立することを防ぐことになります。
孤独問題は高齢者ばかりではない現状
孤独問題は高齢者と同じように若者にも忍び寄ってきています。
若者は働くことで人とのつながりが保たれていたのですが、家族やコミュニティとのつながりが希薄になり、リアルな対面での交流の機会が減少していることも一因です。
近年、社会的孤立感や孤独を感じる若者の増加が注目されているのは、SNSの普及やリモートワークの増加、生活のデジタル化など、現代の生活スタイルの変化が大きな要因として考えられます。
孤独は精神的な健康だけでなく、身体的な健康にも悪影響を与えることが知られていることから、若者が孤独を感じるとうつ病や不安障害などのリスクが高まり、場合によっては社会的な引きこもりに至ることにもなります。
この問題に対処するためには、世代を超えたコミュニティづくりや、オンラインとオフラインでのバランスの取れた交流の促進が必要です。
また、孤独を感じている若者が安心して相談できるサポート体制を整えることも重要な役割となります。
孤独は個人だけの問題ではなく、社会全体で取り組むべき課題となりつつあると言えます。
このように、社会全体で高齢者ばかりではなく孤独問題に対する理解を深め、支援の手を差し伸べることで、一人でも多くの孤独で悩む人たちをなくして、みんなが充実した日々を送ることができるようになることが、誰でもが住みやすい世の中になるということになるのです。